鮭やエビなど赤い色素成分に含まれるアスタキサンチンは自然界の動植物に存在する天然の色素成分カロテノイドの一種で、言わずと知れた最強のアンチエイジング成分です。
アスタキサンチンの成分を配合したサプリメントや化粧品、美容液などの製品も数多く存在していますね。そんな強力な抗酸化物質アスタキサンチンの魅力についてお話します。
アスタキサンチンとは
アスタキサンチンは鮭、エビ、イクラ、蟹、オキアミ(クリル)などの魚介類に多く含まれ、赤やオレンジ色といった天然の色素成分を持つカロテノイドの一種です。フラミンゴのピンク色もアスタキサンチンによるもの。
これらの動物はもともと自分たちの体でアスタキサンチンをつくっているのではありません。海水中のヘマトコッカスという藻類にアスタキサンチンは多く含まれています。
ヘマトコッカスはもとは緑色ですが、紫外線を浴びたり厳しい環境下におかれた時に自分の身を守るために体内でアスタキサンチンを生成して赤色に変化します。
これこそ植物自身がつくり出す天然のパワー「フィトケミカル」です。(植物由来の化学物質 Phyto→植物、 Chemical→化学物質)
自然界でアスタキサンチンをつくりだすことができる生物はヘマトコッカスなどの微生物だけです。
ヘマトコッカス由来のアスタキサンチンを持つ藻類をオキアミなどのプランクトンが食べ、中型のエビや鮭がオキアミを食べ、さらに大型のフラミンゴが鮭などを食べる。といった食物連鎖の過程でアスタキサンチンは間接的に動物たちの体にとりこまれていきます。
鮭が産卵期に厳しい環境下の中、膨大なエネルギーを使い、体内では大量の活性酸素を発生させながらも、力強く川を遡上できるのは、筋肉中に豊富なアスタキサンチンを備えているからだと言われています。
さらに、浅瀬に産卵する鮭の卵は強い紫外線のダメージからもアスタキサンチンによるパワーで、活性酸素を抑制し、DNAを守ることができるのです。
また、アスタキサンチンが豊富なオキアミはクジラの主な栄養源でもあります。アスタキサンチンは、あの大きなクジラの体を支えるほどのパワーがあるということですね。
アスタキサンチンのパワー
最強のカロテノイド
リコピンやβカロテンなどカロテノイドの種類の中でも最強の抗酸化作用を持つアスタキサンチン。その抗酸化力は、コエンザイムQ10の約800倍、ビタミンEのおよそ1000倍ともいわれています。
また、肌が紫外線にあたることで発生する一重項酸素(活性酸素の一種)。これは、私たちの体内で無害化することはできないので、外部からアスタキサンチンなどの抗酸化物質を積極的にとり入れていく必要があります。
肌老化の約8割は紫外線などの太陽光による光老化が原因のひとつ。アスタキサンチンは、肌にダメージを与え老化を加速させる一重項酸素を無害化する働きにも優れているのです。(1)
アスタキサンチンの抗酸化力比較
脳の記憶力向上や脳疾病予防改善
脳は大量の酸素とエネルギーを常に必要としています。脳の体重は全身のおよそ2%ほどですが、全身の血液の約15%は脳へ流れ、酸素やエネルギーは全体のおよそ20%を脳が消費しています。
多くの酸素を取り込んでいる脳内では、その分大量の活性酸素を発生していることが考えられます。 脳には「血液脳関門」という有害物質などが脳内へ入らないようにするための厳しいバリア関門があるのですが、アスタキサンチンはこのバリアを突破し、脳内へ入ることができる数少ない物質です。
アスタキサンチンの強力な抗酸化作用により、脳内の活性酸素を抑制し、脳梗塞をはじめ様々な脳疾病の予防につながると期待されています。
さらに、アスタキサンチンを継続して摂取することにより、脳の海馬の神経新生が高められ、学習や記憶能力が向上するという研究結果も発表されています。
アスタキサンチンは抗酸化作用によって脳の酸化ストレスを軽減。その結果、脳の神経の炎症や死滅を防いで神経を保護しアルツハイマー病や精神疾患、神経変性疾患パーキンソン病などの予防・改善にも効果が期待されています。
そして最近の研究ではアスタキサンチンが脳の神経伝達物質ドーパミンが減ってしまうパーキンソン病の神経のダメージを防ぎ、パーキンソン病にとって有効な治療薬となる可能性があると示唆されています。(2)
眼精疲労の改善効果
目を酷使したり疲れさせると、毛様体筋という目の筋肉が疲労し、ピント調整が上手く働かなくなって、しょぼしょぼしたり、眼精疲労を引き起こす原因に。
脳の血液脳関門と同じように網膜にも「血液網膜関門」という厳しい制限のバリア関門があります。 アスタキサンチンはここを通過して網膜に入ることができる数少ない物質なので、網膜内で直接その優れた抗酸化作用を発揮して血流を改善し、毛様体筋の修復を促してくれます。
アスタキサンチンの強力な抗酸化作用で、老眼、白内障や加齢黄斑変性の予防にもつながるといわれています。
血管の老化を防ぐ
アスタキサンチンは強力な抗酸化作用で血管を若く保つ働きがあります。血管の細胞膜を柔軟にし、血流を改善して、動脈硬化を予防します。
また、血液中のコレステロールの酸化を防ぎ、血圧上昇を抑え、脂肪細胞の蓄積予防、免疫力を高めるなどの作用があり、がん、心臓病、糖尿病、肥満症といった生活習慣病からさまざまな疾患の予防にも。
活性酸素を抑制し、細胞を活性化させるので、新陳代謝が上がり筋肉の疲労回復なども早めます。
アスタキサンチンで若々しく
さまざまな抗酸化物質がある中でアスタキサンチンは海洋生物の中でも最強の抗酸化パワーを秘めています。
私は実際にアスタキサンチンが豊富なサーモンを食べたり、クリルオイルやアスタキサンチンのサプリメントなどを飲んだ翌日は肌の調子が良かったり、目覚めが良く身体の疲れがとれているのを感じたことからアスタキサンチンについて注目する契機となりました。
鮭のアスタキサンチン含有量が多いのは天然の紅鮭です。鮭カマやハラスにも鮭の栄養素が豊富に含まれています。そしてビタミンEはアスタキサンチンの効果をより高めてくれるので一緒に摂ると抗酸化作用がアップ。
鮭のほかエビやイクラ、クリルオイルなどアスタキサンチンが豊富な食品やサプリメントを日々の食生活にとりいれて、強力な抗酸化パワーで、体の内側も外側も若々しく細胞を活性化させていきたいです。
【参考文献】
(1) Kogure K. Novel Antioxidative Activity of Astaxanthin and Its Synergistic Effect with Vitamin E. J Nutr Sci Vitaminol (Tokyo). 2019;65(Supplement):S109-S112. doi:10.3177/jnsv.65.S109
(2) Shen DF, Qi HP, Ma C, Chang MX, Zhang WN, Song RR. Astaxanthin suppresses endoplasmic reticulum stress and protects against neuron damage in Parkinson’s disease by regulating miR-7/SNCA axis [published online ahead of print, 2020 Apr 22]. Neurosci Res. 2020;S0168-0102(20)30018-3. doi:10.1016/j.neures.2020.04.003