コーヒーは日常生活の中で、朝の目覚めの一杯やほっと一息したい時など身近な存在ですね。実際にコーヒーを飲まなくても、ほんわりとしたコーヒー独特の香りに癒された経験はありませんか?
実はコーヒーには嗜好品として楽しむだけではない意外な健康効果があったのです。 ではコーヒーが体にもたらす作用とはいったいどのようなことなのでしょうか。
普段何気なく飲んでいるコーヒーも、コーヒーの豆知識があって飲むコーヒーは滋味豊富な味わいになるかもしれません。
コーヒー効果を期待できる成分
コーヒーポリフェノールクロロゲン酸
コーヒーにはクロロゲン酸というポリフェノールの一種が含まれていて、コーヒーポリフェノールとも呼ばれています。
クロロゲン酸はコーヒーの代表成分であるカフェインよりも含有量が多く、緑茶の約2倍、赤ワインにも匹敵するほどのポリフェノール含有量を誇ります。
クロロゲン酸は老化や病気の原因となる有害な活性酸素を抑制する抗酸化作用に優れており、ポリフェノールの種類の中でも体内に吸収されやすい性質を持っています。
さらに、クロロゲン酸にはミトコンドリアを活性化し、脂肪の蓄積を抑え、体脂肪を燃焼しやすくする働きがあります。
ミトコンドリアは私たちの体の細胞内全てに存在する小器官です。頭を使ったり、体を動かしたり、ホルモンを作り出すなど生命維持活動をするうえで欠かせないエネルギーを作りだし、常に新陳代謝を繰り返し、細胞の再構築を担っています。
ミトコンドリアを元気にすることが若さの秘訣といわれるように、加齢とともに減少してしまうミトコンドリアの働きを活発にして、代謝を促進し、細胞の修復と再生を促すことこそがアンチエイジングや病気の予防に大切です。
お年寄りでもエネルギーに満ちあふれ活動的な人は、ミトコンドリアが活発で元気だといわれています。
ポリフェノールとは
ポリフェノールは植物に存在する苦みや色素成分で、植物自身が紫外線や活性酸素などの害から身を守るために作りだす天然の強力な抗酸化成分です。
ポリフェノールというとフレンチパラドックス*の研究結果から赤ワインが体に良いということで注目され「赤ワイン=ポリフェノール」といったイメージが一般的には強いのではないでしょうか。
実はポリフェノールには種類がたくさんあって、自然界には5000種類以上も存在するといわれているのです。
例えば血管をサビつかせ老化を加速させることで有名な活性酸素があります。あらゆる病気のおよそ90%は活性酸素による酸化ストレスが原因だともいわれているほどです。
種類がたくさんあるポリフェノールですが、全てのポリフェノールはこの活性酸素を抑制する抗酸化作用を備えています。
私たちの体内にも活性酸素に対抗する活性酸素分解酵素(SOD)、抗酸化力が備わっています。
しかし年齢とともにこの酵素を作り出す働きが低下してしまうので、ポリフェノールなどの抗酸化成分を豊富に含む食品などを積極的にとりいれていくことがアンチエイジング、病気の予防には大切です。
ポリフェノールの効果は体内に入ってきてから短時間の作用なので、継続してこまめに摂り入れていくことがポイントです。 活性酸素について
*フレンチパラドックスとはフランス人は喫煙率が高く肉類や脂肪分の多い高カロリーな食事を摂取しているにもかかわらず、他の国とくらべて動脈硬化や心疾患になる人が少ないという矛盾(パラドックス)
代表的なポリフェノールの種類
- アントシアニン(ブルーベリー、カシスなど)
- レスベラトロール(ブドウの果皮など)
- カテキン(緑茶類)
- ショウガオール(生姜)
- ルチン(蕎麦)
- イソフラボン(大豆類)
- カカオ(ココア、チョコ)
- クルクミン(カレー、ウコン)
- コーヒーポリフェノール(コーヒー)
カフェイン
コーヒーの成分として最も代表的なカフェインは、アルカノイドという天然の植物に存在する有機化合物の一種です。コーヒー豆の他、お茶の葉やカカオ豆にも含まれている天然の香りや苦味成分です。
カフェインは脳の中枢神経に働きかけ覚醒作用があり、眠気覚ましや疲労回復効果、仕事や勉強の集中力を高める効果があるほか、鎮痛作用や利尿作用などの効果も期待できます。
カフェインは血管収縮作用があるため、雨の前日や台風といった低気圧時の頭痛、二日酔いの頭痛、片頭痛などの改善効果があるとされています。
またカフェインには、脂肪分解酵素リパーゼの働きを活発にしてくれる作用があり、脂肪がエネルギーとして使われやすくなるので脂肪燃焼効果を高めてくれます。
主なカフェインの効果
- 脂肪燃焼効果
- 覚醒作用
- 利尿作用
- 血管収縮作用
- 解熱鎮痛作用
- 二日酔い予防
- 生活習慣病予防
- パーキンソン病予防
コーヒーに期待できる効果
ダイエット効果
コーヒーに含まれるクロロゲン酸とカフェインはどちらも脂肪の蓄積を抑えて脂肪の燃焼を促す作用があるので、相乗効果により脂肪の燃焼が促進されやすくダイエット効果を期待できます。
また、比較的新しく発見された長生きホルモン、痩せホルモン等といわれているアディポネクチンを増やす効果があるともいわれています。
そして1日にコーヒーを4杯以上飲んでいる人の血中アディポネクチン濃度が高いことがわかったとの研究報告があります。
コーヒーは摂取してから20~30分後に効果が表れるので、運動をする20~30分前にコーヒーを飲むと、脂肪が効率良く燃焼しやすくなったり、食前に飲むと食事中の血糖値の急上昇をゆるやかにしてくれます。
アンチエイジング
細胞を傷つけて血管をサビつかせ、老化を加速させてしまう大きな原因のひとつとして過剰に発生してしまう活性酸素による悪影響があります。
コーヒーに含まれるクロロゲン酸はこの活性酸素に対抗するための強い抗酸化力を備えています。 赤ワインにも匹敵する強い抗酸化力で、活性酸素の害から細胞を守り、新陳代謝を活発にして血行を良くしてくれます。
コーヒーの利尿作用によりむくみを予防しデトックス効果も。 綺麗な血液が全身を巡るようになれば、皮下組織にある毛細血管から肌や髪に必要な栄養を補給することができ、肌のハリや弾力のもとであるコラーゲンやエラスチンを生産する線維芽細胞が活性され、すこやかな肌や髪の再生をサポートしてくれます。
時間や年齢を重ねることを止めることはできませんが、血管を綺麗に保つことは健康やアンチエイジングにつながります。
生活習慣病やがん予防
クロロゲン酸は血糖値の上昇を抑えてくれるので食事前にコーヒーを飲むことで食後の血糖値の上昇をおだやかにし、糖尿病の原因となる糖の生成を抑えてくれる働きがあります。
そしてクロロゲン酸にはコレステロールや中性脂肪値を下げ、血液を固まりにくくしてくれる作用があり、いわゆる血液をサラサラにして動脈硬化や脳梗塞といった生活習慣病にかかるリスクの低下にもつながるでしょう。
正常な細胞を傷つける活性酸素を抑制する強い抗酸化作用を持つクロロゲン酸はがん予防にもつながり、注目成分として研究が進められています。
また、コーヒーに含まれるカフェインには抗炎症作用があり、アレルギーや喘息などの炎症反応を抑えてくれる働きもあります。
脳覚醒とリラックス効果
カフェインは眠気を催す脳内物質アデノシンを抑制し、脳の血行を促進してくれる作用があります。脳に必要な酸素やエネルギー源であるブドウ糖が十分にいきわたりやすくなり、脳が活性化して記憶力や集中力の向上を促します。そして脳の疲労を回復し、認知力の低下を防ぎ、物忘れや認知症の予防につながります。
また、コーヒーは香りを楽しむだけでもストレス軽減作用があります。
淹れたての熱いコーヒーから漂う香り(アロマ)には心と脳をリラックスしてくれる脳内のα波が多く分泌されるという実験結果があります。ストレスはこまめに解消することで免疫力が高まりやすくなります。
肝機能を高める
コーヒーを常飲している人は、まったく飲まない人と比べて、脂肪肝や肝がんなどの発生を抑え、肝障害があっても改善効果がみられるとの研究データが米国、イタリア、フィンランド等で多数発表されています。
国立がんセンターでも「コーヒーを多く飲む人ほど肝がんを予防する」と発表し、「コーヒーを1日3杯飲むと肝細胞がんのリスクが半分になる」という研究結果もあるそうです。
一方、同じカフェインを含むお茶では同様の結果は得られなかったということで、コーヒーに含まれるクロロゲン酸による効果だと考えられています。
クロロゲン酸はポリフェノールの中でも強い抗酸化力があり、さらに体内に吸収されやすいという性質があります。 お酒を飲むことで、肝機能が低下するのを防ぎ、二日酔い予防にも効果があるといわれています。
カフェインには血管収縮作用があるので、アルコールにより血管が拡張することで引き起こされる頭痛の緩和にもつながります。
お酒を飲む前や、飲んだ後、あるいは飲酒中に一緒にコーヒーを飲むことで、コーヒーの利尿作用でアルコールが排出されやすくなります。
そして、脳をリラックスさせるアルコール作用とは対照的にコーヒーの脳覚醒作用により酔いにくくなるといわれています。
エスプレッソとブランデーや、焼酎とコーヒー豆など、お酒とコーヒーをブレンドしたカクテルもたくさんありますね。飲みやすいことからついつい飲み過ぎてしまうのが注意点です。
お酒もコーヒーも「過ぎたるは及ばざるが如し」飲み過ぎては逆効果になってしまうので自身の適量を守り飲み過ぎには注意しましょう。
コーヒーの効果的な飲み方と注意点
- ダイエットのためにはミルクと砂糖は入れずブラックで飲む
- 脂肪燃焼代謝促進のためにはホットで飲む
- インスタントコーヒーは原材料表示にコーヒー豆だけの添加物が含まれていないものを選ぶ
- 食事や運動の20~30分前に飲む
- 覚醒作用で睡眠の質が下がるので夜は控える
- 1日に3杯~4杯飲むのが効果的
- 1日に5杯以上は逆効果
- 妊娠中や子供は控えた方が良い
- コーヒーに含まれるタンニンは鉄分の吸収を妨げるので飲み過ぎに注意
- 空腹時のコーヒーは口臭の原因となるのでエチケットケアを
- お酒を飲めない体質の人はコーヒーも苦手な傾向にあるので無理に飲まないようにしましょう
【参考文献】
- Lee A, Lim W, Kim S, Khil H, Cheon E, An S, Hong S, Lee DH, Kang SS, Oh H, Keum N, Hsieh CC. Coffee Intake and Obesity: A Meta-Analysis. Nutrients. 2019 Jun 5;11(6):1274. doi: 10.3390/nu11061274. PMID: 31195610; PMCID: PMC6628169.