強いストレスがかかったり、慢性的にストレスを感じる生活が継続してあると、ストレスホルモンのコルチゾールが分泌され、食欲が増進し脂肪をため込みやすくし、肥満の原因となります。
コルチゾールが増加してしまうと脳の細胞や神経を委縮させ、自律神経の乱れ、うつ症状などの症状があらわれやすくなったり、免疫力の低下、ホルモンバランスの乱れ、不眠、アレルギー症状の悪化、肌荒れ、老化促進など心身ともにあらゆる不調が生じる原因となってしまいます。
ストレスによって暴飲暴食をしてしまったり、偏った食生活をしていると栄養バランスが崩れてしまいます。そして、ストレスがたまるとビタミンB群やビタミンCが消耗されやすくなります。ビタミンB群もビタミンCもストレスに強い体づくりのために欠かせない栄養素です。
加工食品などを減らして、野菜や果物などから得られるビタミン、ミネラル、フィトケミカル(植物由来の天然の有効成分)、良質なたんぱく質、脂質などをバランス良くとりいれることでストレスレベルを軽減し、心と身体の健康に役立つことが報告されています。(1)
抗酸化食材
不安やうつ症状、神経障害などは脳の酸化ストレスの増加と深く関わっています。ストレス過多や不規則な食生活習慣、運動のし過ぎ、加齢などによって活性酸素が過剰に発生し、体内の抗酸化力では抑制できなくなる状態が酸化ストレスです。
酸化ストレスが増加するとその影響が目に見える形であらわれてきます。体内組織や細胞が損傷していき、それががんや動脈硬化、心疾患、糖尿病、脳梗塞、アルツハイマー病、パーキンソン病、関節リウマチ、緑内障、白内障、シワや白髪が増え老化の促進などさまざまな病気の原因となったり、老化の症状としてあらわれてきます。
私たちの体内には活性酸素が過剰に発生してもそれを抑制して体の健康を維持する抗酸化酵素(SODなど)が備わっていますが、残念ながらその抗酸化能力は20歳頃から低下していき、40代では20代の頃の半分程度にまで低下してしまうといわれています。
そのため、抗酸化物質が豊富に含まれる抗酸化食材を積極的にとりいれて抗酸化力を補っていくことが大切です。抗酸化食材の摂取は、過剰な活性酸素を抑制して酸化ストレスレベルを減らし、生きるためのエネルギーを生み出すミトコンドリア機能を活性化します。
それによって脳の神経損傷を保護し、うつ病や不安症状の改善、アルツハイマー病、パーキンソン病など脳の神経障害保護に役立つ可能性があります。(2、3)
抗酸化作用の豊富な栄養素はフィトケミカル(ポリフェノール、カロテノイド、硫黄化合物など)、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、アダプトゲンハーブなどがあります。
トリプトファン
トリプトファンは必須アミノ酸のひとつで、不安症状やイライラした精神を穏やかにする作用の神経伝達物質セロトニンの原料となります。セロトニンは睡眠にかかわるホルモンのメラトニンを合成する材料ともなります。
長期間ストレスにさらされていたり、抑うつ症状や怒りっぽい人は脳のセロトニンレベルが低い可能性があります。
トリプトファンは体内で合成されないため、食べ物などから意識的にとりいれる必要のある栄養素です。トリプトファンは牛・豚レバーや魚、卵、乳製品などのたんぱく質に含まれています。
トリプトファンはビタミンB6、ナイアシン、マグネシウムとともにセロトニンを生成するのでこれらもあわせてとりいれたい栄養素です。
マグネシウム
マグネシウムは体内の細胞や骨、筋肉などに存在し、生体機能を調節する必須ミネラルです。マグネシウムは神経伝達の調整、細胞内の核酸の産生、たんぱく質の合成、細胞の生まれ変わり、エネルギーをつくる酵素(ATP)など生体内において300種以上もの酵素反応の働きを助けています。(4)
そしてマグネシウムは脳の中枢神経系にも関わっており、マグネシウムが不足すると神経伝達物質のドーパミンやセロトニンの分泌が低下し、うつ症状やPMS症状の悪化、精神障害などの原因となる可能性が考えられるといわれています。
ストレスの多い生活やアルコールの飲み過ぎによってマグネシウムは不足しやすくなってしまうので、ストレスのある時などは積極的にとりいれることが大切です。
マグネシウムを含む主な食品
- ナッツ類、かぼちゃの種
- ほうれん草
- 豆乳、豆腐、枝豆などの大豆製品
- ひじき、わかめ
- するめ
- さば
- イワシ
- 玄米
- バナナ
- アボカド
- ダークチョコレート
ビタミンB群
ビタミンB群とは、ビタミンB1、ビタミンB2、ナイアシン、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸、パントテン酸、ビオチンの8種類の総称です。
ビタミンB群はそれぞれ性質や働きが異なりますが、協力して体内で栄養素の代謝を促進させる補酵素として働き、エネルギーを生成したり、老廃物の代謝に働いています。
そして精神安定作用のセロトニンや、やる気を起こすドーパミンなど、すこやかな心を保つために必要な神経伝達物質の生成を助けます。
ビタミンB群は精神の安定を調整するために重要な働きをすることから「心のビタミン」と呼ばれることもあります。
ビタミンB群は協力しあっているため全ての成分をバランス良くとりいれることが効果的です。ビタミンB群は肉、魚介類、卵、乳製品、緑黄色野菜などに含まれています。
ビタミンC
ビタミンCは抗ストレス作用があり、自律神経を整えストレスを軽減し、脳の神経細胞を保護する可能性があるといわれています。
研究では、ビタミンCの補給をすることによって抗うつ効果を生み出し、気分を改善することが示されました。ビタミンCの補給は不安障害やストレス、うつ病の回復に役立つ可能性があります。
ビタミンCは野菜や果物、サプリメントなどでとりいれることができます。(5、6、7)
亜鉛
亜鉛はたんぱく質やDNA構成要素であるとともに細胞を再生するための新陳代謝、神経伝達、免疫系にもかかわっています。
動物研究では、亜鉛が欠乏するとうつ病のような症状があらわれたという報告があります。(8)
うつ病の患者に抗うつ薬と一緒に亜鉛を補給した研究では、症状が改善される可能性が高いということです。(9)
亜鉛は牡蠣に多く含まれています。
ストレス対策
ストレスは自分なりの方法で早めに解消することが大切です。抗酸化食材やトリプトファン、マグネシウム、ビタミンB群、ビタミンC、亜鉛などを日頃から食生活にとりいれてストレスに対する抵抗力をつけていきましょう。