不安や抑うつ気分をやわらげストレスに強くなる為に役立つ食品

「セロトニン」「ドーパミン」「ノルアドレナリン」は、三位一体となり心と体のバランスを保つために作用している脳の3大神経伝達物質です。

これらのどれかが不足したり、過剰に分泌されたりすると三位一体のバランスが崩れ、イライラして興奮しやすくなったり、抑うつ感、不眠など、心身にさまざまな不調が生じる原因となってしまいます。

体は食べもので構成される

精神の安定に作用するセロトニンは幸福ホルモンとも呼ばれ、興奮系ホルモンのドーパミンやノルアドレナリンの分泌量を調節し、穏やかな精神を保つために重要な役割を果たしています。

セロトニンはトリプトファンという物質から合成されます。トリプトファンは必須アミノ酸のひとつで体内ではつくられないため食品からとる必要があります。

トリプトファンについて

また、DHA/EPA、αリノレン酸といったオメガ3脂肪酸も体内で合成できない必須脂肪酸で、不安障害やうつ症状、精神障害などに対しての有効性がいくつかの研究で確認されています。(1)

私たちの体は日々の食べ物から構成されています。イライラや不安、抑うつ感を軽減するために役立つ食品は脳の健康にも役立ち、ストレスに強い脳、ストレスに対する適応力を高めてくれます。

ストレス対策に役立つ食品

サーモン

サーモンに含まれるDHA/EPAは、私たちの体内でつくることができないため食事からの摂取が必須のオメガ3脂肪酸(多価不飽和脂肪酸)です。

体を構成している全ての細胞の細胞膜は脂質で形成。水分を除くと脳の約60%は脂質でできていて、毎日食事などから摂取している脂質(油)が細胞膜の原料となっています。

ラードやバター、お肉など動物性脂肪に多い飽和脂肪酸は常温で固まる性質があり、体内で血液をどろどろにするといわれるのに対して、青魚に含まれるオメガ3脂肪酸(多価不飽和脂肪酸)はマイナス40度の海水でも固まらず、血液さらさら効果や細胞膜をしなやかに保つ作用があります。

細胞膜がしなやかになると脳の神経細胞間の情報伝達がされやすくなり、脳の神経細胞が活性化してセロトニンなどの神経伝達物質が適切に分泌されるようになるため、学習能力や認知機能、不安症の軽減、脳のさまざまな機能向上につながります。

精神疾患等を抱えている人を対象としたオメガ3脂肪酸の抗不安効果に対する研究では、1日2000mg以上のオメガ3脂肪酸を摂取したグループでは不安症状が軽減されることが認められています。(1)

また、サーモンには自然界最強といわれる抗酸化作用をもつアスタキサンチンが豊富に。過度なストレスなどによって交感神経が働き続けると、脳や体の健康機能を害する活性酸素が大量に発生してしまう原因となります。

アスタキサンチンの強力な抗酸化作用によって活性酸素を抑制し、酸化ストレスを軽減して脳の神経細胞を保護するのに役立ちます。

サーモンのほか、カツオやマグロなどの青魚にもオメガ3脂肪酸は豊富に含まれています。精神安定作用の脳内神経伝達物質セロトニンの原料となるトリプトファンも豊富です。

ウコン

ウコンの主な有効成分はクルクミンで、カレー粉の主要スパイスや肝機能を良くすることでも知られています。クルクミンはポリフェノールの一種で、高い抗酸化力や抗炎症作用をもちます。

活性酸素による害から脳の炎症を抑え、神経細胞を保護し、脳機能を活性化させる効果に期待できます。

いくつかの研究では、クルクミンは精神安定作用のある脳の神経伝達物質セロトニンを高めることができ、ドーパミンやノルアドレナリンレベルを調整し、不安症やうつ病、精神疾患に関わる症状を軽減することが示されています。(2,3)

不安症状を軽減する効果からクルクミンの抗うつ薬としての可能性も示唆されています。(4)

さらにクルクミンは、オメガ3脂肪酸DHAの合成を促進するので、脳のDHA含有量を高める可能性があります。(5)そのため記憶や学習機能の向上、不安障害、うつ症状、神経障害の緩和など、健脳効果に期待されています。

クルクミン含有量は一般的なカレーのルウに比べてカレー粉の方が多いので、ルウを使う場合はカレー粉をプラスすると良いでしょう。

チョコレートやココア

チョコレートやココアの特徴的な成分は原料となるカカオ豆に含まれるテオブロミンとフラバノール(ポリフェノールの一種)。特にハイカカオのダークチョコレートや添加物の少ないピュアココアに豊富に含まれています。

テオブロミンには血行を促進し、心身をリラックスさせ、自律神経を整える作用があります。フラバノールは強力な抗酸化作用があり、病気や老化の原因となる活性酸素を抑制し、コレステロール値の低下、動脈硬化などを予防するほか、ストレスによって増加するコルチゾールの分泌を抑えてくれる働きがあります。

テオブロミンもフラバノールも脳のストレスレベルを下げ、不安症状を緩和したり、認知機能の改善、記憶や学習能力など、脳の機能を高める効果に期待できます。

チョコレートやココアはストレスを減らす抗酸化物質やセロトニンレベルを増加させる作用によって、不安につながるストレスを軽減したり、脳機能の向上に役立つことがいくつかの研究で示されています。(6,7)

カモミール

カモミールには不安をやわらげたり、眠りの質を高めてくれる働きがあります。そして抗酸化作用をもつフラボノイドの一種「アピゲニン」が含まれています。

アピゲニンは脳の炎症や活性酸素を抑制したり、リラックス作用をもたらす脳内のGABA受容体と結合し神経系の活動を抑え、気分を落ちつかせてくれるのに役立ちます。

カモミールの抽出物を8週間摂取した研究では、不安症やうつ病の症状の軽減に役立つことが示されています。(8)

また、新型コロナウィルス対策に有効な成分としてインドERA医科大による論文ではカモミールのアピゲニンが第3位にあげられています。(9)

緑茶

緑茶にはアミノ酸のテアニンが含まれており、ストレスホルモン「コルチゾール」の分泌を抑え、脳のストレスを緩和してくれる働きがあります。

長期的なストレスや過度なストレスによってコルチゾールが過剰に分泌されると、記憶を司る脳の海馬を委縮させたり、免疫系や代謝系にも悪影響を及ぼすことに。うつ病の患者さんではコルチゾール値が高いといわれています。

緑茶にはテアニンのほか強力な抗酸化作用をもつエピガロカテキンガレートやカフェインを含有。これらの成分が相乗的に作用して、イライラを鎮め精神を落ちつかせる脳のセロトニンやGABAレベルを増加し、ドーパミンやノルアドレナリンの分泌を調整します。

そしてエピガロカテキンガレートは脳の健康をはじめ免疫機能の活性化などさまざまな生理活性機能をもちます。インドのERA医科大による論文では新型コロナウィルス対策に有効な成分としてエピガロカテキンガレートが第1位として発表されています。2位はクルクミン(ウコン)、3位はアピゲニン(カモミールティー、パセリ)と続きます。(9)

また一般的な緑茶の茶葉には神経毒性のある農薬が残留しているので、無農薬のお茶を選びたいです。

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日々の食事でストレス適応力を高める

上記のほかにも精神安定作用のためにはトリプトファンからセロトニンを合成する際にビタミンB6、ナイアシン、マグネシウムが必要で、抗酸化物質もサポートします。

これらはレバーや卵、乳製品、大豆製品、ナッツ類、緑黄色野菜に含まれるほか、抗酸化物質のビタミンCが豊富なパプリカ、キウイ、イチゴ、柑橘類などがあります。

また、心の安定やストレス解消のために役立つことは、適度な運動や日光浴、十分な睡眠、腸内環境の改善、笑顔をつくることも大切ですね。

実際は楽しくなくても口角を上げて、笑顔をつくると、脳は「楽しい」「幸せ」だと錯覚してセロトニンの分泌を促進し、脳の活性化をサポートし、免疫システムも向上します。

 

【参考文献】

(1) Su K, Tseng P, Lin P, et al. Association of Use of Omega-3 Polyunsaturated Fatty Acids With Changes in Severity of Anxiety SymptomsA Systematic Review and Meta-analysisJAMA Netw Open. 2018;1(5):e182327. doi:10.1001/jamanetworkopen.2018.2327

(2) Sanmukhani J, Satodia V, Trivedi J, et al. Efficacy and safety of curcumin in major depressive disorder: a randomized controlled trial. Phytother Res. 2014;28(4):579-585. doi:10.1002/ptr.5025

(3) European Journal of Pharmacology|The effects of curcumin on depressive-like behaviors in mice

(4) S.K. Kulkarni, Ashish Dhir, Kiran Kumar Akula, “Potentials of Curcumin as an Antidepressant”, The Scientific World Journal, vol. 9, Article ID 624894, 9 pages, 2009. https://doi.org/10.1100/tsw.2009.137

(5) Wu A, Noble EE, Tyagi E, Ying Z, Zhuang Y, Gomez-Pinilla F. Curcumin boosts DHA in the brain: Implications for the prevention of anxiety disorders. Biochim Biophys Acta. 2015;1852(5):951-961. doi:10.1016/j.bbadis.2014.12.005

(6) Nehlig A. The neuroprotective effects of cocoa flavanol and its influence on cognitive performance. Br J Clin Pharmacol. 2013;75(3):716-727. doi:10.1111/j.1365-2125.2012.04378.x

(7) Martin FP, Antille N, Rezzi S, Kochhar S. Everyday eating experiences of chocolate and non-chocolate snacks impact postprandial anxiety, energy and emotional states. Nutrients. 2012;4(6):554-567. doi:10.3390/nu4060554

(8) Amsterdam JD, Shults J, Soeller I, Mao JJ, Rockwell K, Newberg AB. Chamomile (Matricaria recutita) may provide antidepressant activity in anxious, depressed humans: an exploratory study. Altern Ther Health Med. 2012;18(5):44-49.

(9) researchsquare|Identification of Dietary Molecules as Therapeutic Agents to Combat COVID-19 Using Molecular Docking Studies

食生活アドバイザー。スキンケアスペシャリスト。温泉ソムリエ。アラフォー女性健康美容ライター。 ストレスから睡眠障害、喘息発症、帯状疱疹を患う。夫は進行性の神経難病。 食生活やライフスタイルを見直したことで心身の良い変化を実感し、これまでの経験から難病の進行抑制、心と体の健康、エイジング対策探求に情熱を注いでいます。
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