私たちの体内に存在する脂質は、コレステロール、リン脂質、中性脂肪、脂肪酸など色々な種類の脂質が存在します。
コレステロールや中性脂肪などの脂質が過剰になったり、バランスがくずれてしまうことを脂質異常症と言います。放っておくと生活習慣病やさまざまな疾患の原因ともなるので、脂質のバランスを見直してみましょう。
コレステロールの働き
細胞膜の材料
私たちの体を構成する骨や筋肉、内蔵、神経、皮膚などは約37兆個もの細胞でつくられています。 これら全ての細胞は細胞膜におおわれ、コレステロールはリン脂質やたんぱく質とともに細胞膜の原料となり、体にとって必要な物質を細胞内に入れたり、不要なものを出したりする重要な役割を果たしています。
ホルモンや胆汁酸の材料
コレステロールは男性ホルモンや女性ホルモン、副腎皮質ホルモンの材料にもなります。副腎で合成されるホルモンは50種類以上にも及ぶといわれ、これらの全てのホルモンは生命活動をするうえで重要な働きをしています。
コレステロールというと良くないイメージがあるかもしれません。もちろん過剰なコレステロールは減らす必要がありますが、一方でコレステロールは女性ホルモンなどホルモンの原料ともなるので、少なすぎるのも良くありません。
さらにコレステロールは胆汁酸の材料ともなります。胆汁酸はコレステロールを原料に肝臓でつくられます。胆汁酸は脂肪の消化吸収を助ける消化液の一種で体が正常に働くうえで無くてはならない成分の一つでもあります。
コレステロールの種類
- HDLコレステロール(善玉)
- LDLコレステロール(悪玉)
悪玉コレステロールと呼ばれているLDLコレステロールは肝臓でつくられたコレステロールを全身の各組織へと送り届けます。善玉コレステロールと呼ばれているHDLコレステロールは余分なコレステロールを回収して肝臓へ戻すという役割があります。
本来、LDLコレステロール(悪玉)も体にとって必要な働きをしてくれているのですが、過剰に作られてしまうことが問題となっています。 過剰にLDLコレステロール(悪玉)が作られてしまうと、HDLコレステロール(善玉)の回収が間に合わなくなるのです。
余ったコレステロールは血管壁に付着し、血液の通り道を狭めてしまい、これが動脈硬化を引き起こす原因となってしまうことに。 コレステロールが脳の血管に溜まり血管が狭くなったり詰まったりすれば脳梗塞の引き金になってしまうし、心臓の血管で同様のことが起きれば心筋梗塞などのリスクが高まってしまうのです。
コレステロール値はなぜ上がるのか
食べ過ぎエネルギー過多
コレステロールのうち約70~80%は肝臓や体内で合成されているので、食品から摂取したコレステロールによる影響は限られていると言われています。
体内のコレステロールは1日の代謝量が常に2g程度になるよう肝臓で調整されています。コレステロールを多く含む食品を摂った場合はその分、体内でのコレステロールの合成が減り、一定に保たれるようになっています。 ではなぜコレステロールは体内で一定量を調節しているのに上がってしまうのか?それは高カロリーな食品や食べ過ぎが原因です。
運動不足や食べ過ぎなどで体内のエネルギーが消費されずにいると、消費されずに残ったブドウ糖や脂肪酸を原料に中性脂肪やコレステロールは必要以上に合成されてしまうのです。
飽和脂肪酸やトランス脂肪酸
脂身の多い肉やラード・バターなど動物性脂肪に多く含まれている「飽和脂肪酸」や、マーガリン、ショートニング、スナック菓子などに使われている人工の油「トランス脂肪酸」はコレステロールを合成する材料になるといわれているので注意が必要です。 トランス脂肪酸は未だ日本では規制されていませんが、米国ではすでに厳しく制限されています。
一方、サバやイワシなど魚油のDHA/EPAや、亜麻仁油などのオメガ3系脂肪酸にはコレステロール値を下げる作用があるので積極的にとりいれたい油です。
過度なストレス
慢性的なストレスや強いストレスを受けると、交感神経が刺激されストレスホルモンと呼ばれているコルチゾールやアドレナリン・ノルアドレナリンが副腎から分泌されます。 これらのホルモンは血管を収縮させ血圧や血糖値を上昇させる働きがあります。
そしてコレステロールはホルモンの材料でもあるので、過度なストレスはコレステロールの合成が促進されてしまい、結果的に血中コレステロールの量が増えてしまうのです。
お酒の飲み過ぎ
お酒を飲み過ぎると二日酔いの頭痛や、胃腸の不調、肌荒れなどが生じます。これは体内で交感神経優位な状態が継続することで免疫力が弱まり、老化や病気の原因である活性酸素が大量に発生し、皮膚や粘膜に必要な常在菌が破壊されてしまうからです。
そして肝臓では脂肪酸が中性脂肪の合成を促進するため中性脂肪値を高める原因となってしまいます。中性脂肪値が高まると善玉コレステロールが減り、悪玉コレステロールが増加してしまう傾向にあります。
一方、適量の飲酒は血行を促進し、ストレス緩和作用とともに善玉コレステロールを増やす働きがあるといわれています。
適量の飲酒は、まったくお酒を飲まない人に比べて心筋梗塞など冠動脈疾患のリスクが低下するという研究結果も明らかになっています。 身体の健康を考えるなら飲酒は適量を守って楽しく上手に付き合っていきたいものですね。
女性ホルモンの変化
女性ホルモンとコレステロールは深い関係にあります。女性ホルモンのエストロゲンには善玉コレステロールの合成をサポートし、過剰につくられる悪玉コレステロールを抑制して、コレステロール値のバランスを保つ働きがあります。
そのため、エストロゲンの分泌が減少する閉経を迎える時期には、エストロゲンの原料となるコレステロールが使われなくなるので、コレステロール値が上がりやすくなるのです。 このメカニズムを理解していれば閉経後に少しくらい数値が上がっても焦る必要はありません。
あまりにも急激な上昇は食事や生活習慣などを見直してみましょう。 一方、女性らしさをつくってくれるエストロゲンですが、閉経後はまったく女性ホルモンが分泌されなくなってしまうわけではありません。
卵巣からの分泌は無くなってしまっても、副腎皮質から分泌されるホルモンの親玉とも言われているDHEAの一部が女性ホルモンに変換されるのです。DHEAを元気にして健康を保っていきたいですね。
中性脂肪が善玉を減らす
中性脂肪値が高いと悪玉コレステロールが増加しやすいといわれています。そして中性脂肪は善玉コレステロールの合成を抑制してしまう作用から、中性脂肪値が高い人の善玉コレステロール値は低い傾向にあります。
中性脂肪値が高い状態が続くと、動脈硬化が引き起こされたり、脳梗塞や心筋梗塞を引き起こす原因にもなりかねません。
病気や薬、遺伝の可能性も
糖尿病や腎臓病、肝機能疾患などほかの病気で脂質異常症がみられ、中性脂肪やコレステロール値が高い場合があります。
これらの疾病のために服用している薬の種類によってはコレステロールを増やしてしまう事もあります。 長期間の薬の服用や、ホルモン剤、血圧を下げる薬などは血中の脂質値が高くなる可能性があるといわれています。
また、家族性コレステロール血症といった遺伝や、体質的にコレステロールの処理がコントロールできにくい場合もあります。
家族性の脂質異常症はさまざまなタイプがあるので自分がどのタイプか医療機関等で確認して対策をすることが大切です。
悪玉コレステロール値を下げるために
- 食物繊維を多めにバランスの良い食生活の見直し
- 起床や就寝時間、食事や排泄の時間など規則正しい生活リズムの心がけ
- 動物性脂肪の飽和脂肪酸や加工食品のトランス脂肪酸などを避ける
- オメガ3系脂肪酸の魚油(DHE/EPA)や亜麻仁油(αリノレン酸)を積極的に摂り入れる
- 食事は腹8分目を目安に、揚げ物や高カロリーな食品、間食を控える
- 糖質や糖類の過剰摂取は控える
- 飲酒は適量に
- 適度な運動
- 腸内環境を整える
- ストレスをためない
- 十分な睡眠