コリンの働きとは?脳の活性化にも欠かせない必須栄養素

コリンは細胞膜の主要な構成成分で、神経伝達物質アセチルコリンとして機能したり、健康な脳の発達、筋肉、肝機能、神経系、代謝などにも関わっています。

コリンは細胞膜の主成分

コリンは1998年にアメリカの医学研究所(IOM)により、人間にとって不可欠な必須栄養素として認められました。(1)

私たちの体を構成する全身の細胞は諸説ありますが、およそ数十兆個の細胞からできています。細胞内にはDNAをはじめミトコンドリアやリソソーム、ゴルジ体などの小器官、たんぱく質などがひしめき合うように存在しています。

その細胞を囲む細胞膜はリン脂質とたんぱく質からできていて、脂質2重層というリン脂質が集まった2重構造をしています。

リン脂質の一種レシチンはホスファジルコリンともよばれ、ホスファジルコリンを構成しているコリンは水溶性のビタミンのような物質です。

中性脂肪の場合、グリセロールに脂肪酸が3つ結合した形ですが、リン脂質は脂肪酸2つにコリンが結合した形になっています。

そのため、脂質2重層からなる細胞膜の内側と外側はコリンの親水性で(水にとけやすい)、血液や細胞内の水分をスムーズに出し入れしやすくなっています。中は脂肪酸で(脂溶性で油がとけやすい)油が不要なものを入れないようになっています。

このように細胞膜は細胞内に必要な情報や物質をとり込んだり、不要なものを放出したり、選択的に調整する(選択的透過性)重要な役割を果たしているのです。

コリンは細胞膜の主要な構成成分として、神経細胞などの細胞膜を形成したり、血液、心臓、肺、肝臓、胃腸、腎臓など人体の全ての細胞に存在しています。

コリンは血管拡張作用のある神経伝達物質アセチルコリンの材料ともなります。十分なコリンがあれば高血圧を予防したり、動脈硬化や肝脂肪、肝硬変の予防、記憶力を高める働きに役立ちます。

コリンの健康効果

脳機能の改善

コリンは体内に吸収されると血液脳関門を通り抜けて、脳の発達や記憶形成に関わる神経伝達物質アセチルコリンを生成します。

脳の発達を改善したり、記憶機能を高め、加齢にともなう記憶低下の予防、認知機能の改善、メンタルの健康、神経損傷から脳を保護するなど、脳機能の改善に効果を期待できます。(2)

そのためアセチルコリンが少なくなると記憶力の低下や物忘れの原因となってしまいます。最近忘れっぽくなったと思う場合は、コリン不足かもしれません。認知症の方では脳内のアセチルコリンが非常に減少しているといわれています。

食事中のコリン摂取量と認知機能、脳の形態に関連性があるか判断する大規模な観察研究では、よりコリン摂取量が多く血中コリン濃度が高いほど脳機能の改善に有意性が示されています。(3,4)

また、記憶力が低下傾向にある50~85歳(男女)のボランティア被験者に、1日あたり1,000mgのコリンを補給した研究では、言語記憶機能が改善されたということです。(5)

コレステロールや血圧を下げる

コリン(レシチン)は水と油の両方に親しみやすい乳化剤としての作用があります。そのため血中のコレステロールを溶かして、血管壁にコレステロールが沈着するのを防ぎ、動脈硬化予防、コレステロールを正常値に保つ働きがあります。

またコリンはアセチルコリンの材料となります。アセチルコリンには血管を拡張して血圧を下げる作用があります。

肝機能の健康

コリンは胆汁酸から肝細胞を守ったり、肝臓に脂肪がたまらないように働くため、脂肪肝や肝硬変の予防・改善に役立ちます。

コリン摂取量と非アルコール性脂肪肝との関連を調べた研究では、正常体重の女性で食事中のコリン摂取量が多いと脂肪肝のリスクが低くなる可能性があるということです。(6,7)

コリンのとり入れ方

コリンは細胞構造から神経伝達物質の合成にいたるまで、幅広く人間の代謝に関わっている重要な栄養素でありながら多くの人が推奨摂取量を満たしていないといわれています。

コリンが特に欠乏しやすいのは、アルコールを大量に摂取している方や、スポーツ選手など運動量の多い方、妊娠中の女性、閉経後の女性です。

長時間の激しい運動や大量のアルコール摂取はコリンの消費量が高まりやすくなります。

妊娠中の女性は胎児が発育のためにコリンを必要とし、閉経後の女性はエストロゲンがコリンの生成を助けているためにエストロゲンレベルが低下するとコリンの生成が不足しやすくなる可能性があります。

また、年齢とともにコリンの合成能力が低下します。

コリンは体内で合成されていますが、肝臓以外の臓器ではほとんどつくられないため食事からの十分な補給が必要です。(8)

日本ではコリンの食事摂取基準等は設定されていませんが、アメリカでは必須栄養素として摂取目安量が定められています。

1日あたり成人男性では550mg、成人女性では425mgで、耐用上限量は成人男女とも3,500mgです。

コリン摂取の注意点

食品だけから1日あたり3,500mg以上のコリンを摂取するのはほぼ不可能ですが、高容量のサプリメントなどを大量に摂取すると血圧の低下、魚臭い体臭、発汗、下痢、嘔吐などの副作用が発生する可能性があるので注意が必要です。

コリンを多く含む食品

食品中のコリンはリン脂質の一種であるレシチンからのホスファジルコリンの形をしています。コリンの豊富な食品は卵や牛・豚・鶏レバー、大豆、キャビア、タラ、鮭、ブロッコリーなどに含まれています。

最も多く含まれている食品は生の卵黄です。卵黄(生)の100g中コリン含有量(ホスファジルコリン)は、およそ680mg含まれています。

コリンはDHA/EPAと同じ不飽和脂肪酸で酸化されやすいため、ビタミンCやビタミンEなどの抗酸化食材と一緒にとりいれると良いでしょう。

最後に

コリンは記憶形成や感情などに関わるアセチルコリンの材料となります。そのため抗コリン作用のある薬を継続的に長期間服用しているとアセチルコリンの作用が阻害され、認知機能に影響を及ぼす可能性があるといわれています。

抗不安薬、抗精神病薬、睡眠薬、抗パーキンソン薬、過活動膀胱治療薬、ステロイド、抗菌薬、気管支拡張剤、くしゃみや鼻水を止める抗ヒスタミン剤、風邪薬など、身近で入手しやすい薬剤の中にも抗コリン剤が含まれている薬があります。(9,10)

薬には様々なメリットがありますが、服用している薬を見直して、DHAやコリン、抗酸化食材などを意識的にとりいれ脳細胞の働きを高めていきましょう。

 

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【参考文献】

(1) Zeisel SH, da Costa KA. Choline: an essential nutrient for public health. Nutr Rev. 2009 Nov;67(11):615-23. doi: 10.1111/j.1753-4887.2009.00246.x. PMID: 19906248; PMCID: PMC2782876.

(2) Blusztajn JK, Slack BE, Mellott TJ. Neuroprotective Actions of Dietary Choline. Nutrients. 2017 Jul 28;9(8):815. doi: 10.3390/nu9080815. PMID: 28788094; PMCID: PMC5579609.

(3) Poly C, Massaro JM, Seshadri S, Wolf PA, Cho E, Krall E, Jacques PF, Au R. The relation of dietary choline to cognitive performance and white-matter hyperintensity in the Framingham Offspring Cohort. Am J Clin Nutr. 2011 Dec;94(6):1584-91. doi: 10.3945/ajcn.110.008938. Epub 2011 Nov 9. PMID: 22071706; PMCID: PMC3252552.

(4) Nurk E, Refsum H, Bjelland I, Drevon CA, Tell GS, Ueland PM, Vollset SE, Engedal K, Nygaard HA, Smith DA. Plasma free choline, betaine and cognitive performance: the Hordaland Health Study. Br J Nutr. 2013 Feb 14;109(3):511-9. doi: 10.1017/S0007114512001249. Epub 2012 May 1. PMID: 22717142.

(5) Spiers PA, Myers D, Hochanadel GS, Lieberman HR, Wurtman RJ. Citicoline improves verbal memory in aging. Arch Neurol. 1996 May;53(5):441-8. doi: 10.1001/archneur.1996.00550050071026. Erratum in: Arch Neurol 1996 Oct;53(10):964. PMID: 8624220.

(6) Yu D, Shu XO, Xiang YB, Li H, Yang G, Gao YT, Zheng W, Zhang X. Higher dietary choline intake is associated with lower risk of nonalcoholic fatty liver in normal-weight Chinese women. J Nutr. 2014 Dec;144(12):2034-40. doi: 10.3945/jn.114.197533. Epub 2014 Oct 15. PMID: 25320186; PMCID: PMC4230213.

(7) Guerrerio AL, Colvin RM, Schwartz AK, Molleston JP, Murray KF, Diehl A, Mohan P, Schwimmer JB, Lavine JE, Torbenson MS, Scheimann AO. Choline intake in a large cohort of patients with nonalcoholic fatty liver disease. Am J Clin Nutr. 2012 Apr;95(4):892-900. doi: 10.3945/ajcn.111.020156. Epub 2012 Feb 15. PMID: 22338037; PMCID: PMC3302364.

(8) Zeisel SH, da Costa KA. Choline: an essential nutrient for public health. Nutr Rev. 2009;67(11):615-623. doi:10.1111/j.1753-4887.2009.00246.x

(9) 日本精神神経学会総会|薬剤による認知機能障害

(10) 北里大学病院|薬剤性の認知機能障害について

食生活アドバイザー。スキンケアスペシャリスト。温泉ソムリエ。アラフォー女性健康美容ライター。 ストレスから睡眠障害、喘息発症、帯状疱疹を患う。夫は進行性の神経難病。 食生活やライフスタイルを見直したことで心身の良い変化を実感し、これまでの経験から難病の進行抑制、心と体の健康、エイジング対策探求に情熱を注いでいます。
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