卵は地球上で最も栄養価の高い食品のひとつだといわれています。記憶力や脳の機能を高めたり、免疫機能の向上、生活習慣病の予防・改善、美肌の手助けもしてくれる身近で優秀な食材。そんな卵の栄養効果とスキンケア方法についてご紹介します。
卵の栄養効果
優れた栄養食材
私たちの骨や血液、毛髪、皮膚、爪、ホルモンなどは20種類のアミノ酸が結合したたんぱく質で構成されています。
アミノ酸の中には体内で合成できないため食物などからとらなければならない9種類(成人は8種類)の必須アミノ酸があります。
卵には人間の体内ではつくられない必須アミノ酸が理想的なバランスで含まれており、たんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラルなどビタミンCと食物繊維以外の体に必要な栄養素がほとんど含まれています。
食品に含まれる必須アミノ酸の構成バランスを数値化したアミノ酸スコアという評価では、卵のアミノ酸スコアは100点満点です。
アミノ酸価、たんぱく価ともに食品中でもトップの卵は良質なたんぱく質源、優れた栄養食品なのです。
卵白には含まれない卵黄の脂質
卵黄には免疫力を高めるビタミンA、D、抗酸化力を持つビタミンE、新陳代謝を活発にするビタミンB群などが豊富に含まれています。
そして卵黄には卵白には含まれていないリン脂質のレシチンが含まれています。レシチンはコレステロール値の抑制作用があるほか、肝臓に脂肪がたまらないように働き、肝硬変や動脈硬化を予防します。
レシチンには神経組織や脳、細胞膜を構成するコリンも含まれています。コリンは脳で記憶や精神機能に関わるアセチルコリンを生成するために不可欠な栄養素。
コリンは脳を活性化し、記憶力や認知機能の改善、神経細胞の損傷などから脳を保護する働きがあります。(※)
卵白にはリゾチームという酵素が含まれ、殺菌力があり風邪の原因菌を分解する作用があります。
卵の健康効果
疲労回復効果
卵は同じたんぱく質の肉類とくらべて、脂質が少なく効率良くたんぱく質をとりいれることができます。
卵のたんぱく質に含まれるアミノ酸は体内への吸収が早く、運動などで疲労した体の回復をサポートしてくれます。
脳を活性化
卵黄にはリン脂質の一種であるレシチンや新陳代謝を促すビタミンB群が含まれています。レシチンは細胞膜の主要な成分で、細胞膜は必要な栄養素を細胞内に入れたり、不要なもの細胞外へ排出する重要な役割をになっています。
レシチンは細胞膜をはじめ脳神経や神経組織を構成し、血液中の余分なコレステロールを排出したり、脳や神経系の働きを活性化。
レシチンに含まれているコリンという成分が脳でアセチルコリンに合成されます。アセチルコリンは脳の神経伝達物質で、記憶や精神機能など脳の機能を調整する重要な役割を果たしています。
アセチルコリンはビタミンB群とともに脳の記憶力を高めたり、認知機能改善、神経細胞の保護、自律神経失調症の予防改善など、脳の活性化を促進します。(※)
また、レシチンは乳化剤としての作用があるため、脳に良い魚油のDHA/EPAなどを摂取する際には、卵黄を一緒にとりいれるとオメガ3脂肪酸の吸収率が高まりやすくなります。
美肌や髪の健康を保つ
卵黄にはビタミンB群の一種であるビオチンが含まれています。ビオチンは皮膚炎を予防することから発見されたビタミンで、健康な皮膚と髪のために大切なビタミン。
ビオチンはアミノ酸からたんぱく質を合成する過程に関わっているため、コラーゲンやエラスチンの生成をサポートし、皮膚や髪、粘膜などのターンオーバー(生まれ変わり)を促します。
コラーゲンは皮膚の弾力など美肌づくりに必要なだけでなく、頭皮を健康にしてつやのある髪の成長や白髪、薄毛予防にも効果を期待できます。
二日酔いの予防
お酒を飲むと体内ではアルコールを分解するときに肝臓内のメチオニン(アミノ酸の一種)がたくさん消費されていきます。
卵にはメチオニンが豊富に含まれています。メチオニンは肝臓でアルコールが分解されるときに必要なアミノ酸で、卵100g中に約400mgも含まれています。
代謝を助けるビタミンB群やビタミンCと一緒に卵料理をとりいれることでアルコールの分解を促し、肝機能の負担を軽減。
卵の効果的な食べ方
ビタミンCや食物繊維が豊富な野菜や果物と一緒にとりいれることで、卵に不足する栄養素を補うことができます。
また卵かけご飯では、生の卵白のみに含まれているたんぱく質「アビジン」が、卵に含まれるビオチンと胃や腸の中で結合してビオチンの吸収を妨げてしまうので注意。我が家は卵黄だけ使うようにしています。
ビオチンはビタミンB群の仲間で皮膚や髪の毛の健康に必要な栄養素。生卵を毎日大量に食べるなど極端な食べ方をしなければ心配ないといわれていますが、皮膚や薄毛、白髪などが気になっている方は心配ですよね。
アビジンは卵白を加熱することで壊れるので、温泉卵、半熟卵など卵白のみ加熱するような調理をしたり、生の卵黄のみを摂取すると良いです。
卵黄に含まれるレシチンやビタミンB群など加熱によって減少してしまう栄養素もあるので、生の卵白は控えて、卵黄は生で摂りいれることが理想。
取り除いた卵白は、スキンケアとして活用する方法もあります。
卵白でスキンケア
卵白には肌をきれいにしてくれる成分が豊富に含まれています。卵白で洗顔したり、卵白パックなど、卵白を活用したスキンケアで美肌づくりをサポート。
卵白の肌に良い成分
- 殺菌作用・・・リゾチーム
- 保湿成分・・・アルブミン
- 角質除去効果・・・硫黄
- 皮脂汚れを落とす・・・界面活性作用
卵白洗顔は、そのままの卵白だと扱いにくいので泡立て器や泡立てネットなどで泡立ててから肌の上にのせて優しくマッサージしたあと洗い流します。
卵白パックは泡立てた卵白を顔に塗布するか、コットンに浸してパックします。乾いたら洗い流します。卵白がたれないように小麦粉を混ぜるなどの方法もありますが、髪の生え際などに付着すると中々取れにくく、排水口の詰まりにも。
卵白スキンケアで得られる効果
- 美白効果
- 毛穴を引き締める
- リフトアップ
- 黒ずみ除去
卵白スキンケアの感想
実際に使ってみた私の経験・感想では、卵白洗顔やパックをしたあとは、肌の色が明るくなり、つるつるとして、自然な保湿感やハリを感じました。卵2、3個分の卵白があると全身にも使えます。
卵白は弱アルカリ性なので少量のクエン酸やレモン汁を加えてから泡立て器を使うとヨーグルトのようになって扱いやすくなります。
砂糖にも泡立ちを安定化する作用と保水性があるので、卵白にクエン酸、砂糖、塩を適量加えてよく混ぜ合わせ、卵白スクラブとして入浴時に全身に使っています。
お風呂上りは肌の角質がとれて、全身しっとりすべすべになりますよ。スクラブ感を重視したい場合は塩を多めに入れて、砂糖は小さじ一杯程度に。
卵黄は食べて健康に卵白でスキンケア
一方、肌が敏感な方や卵アレルギーのある方は注意が必要です。また、卵白は生ものなのでつくり置きなどせず、冷蔵庫に入れて早めに使い切りましょう。
脳や肌に良い生の卵黄は卵かけご飯のほかそのままサラダやおかずにトッピングして、取り除いた卵白で全身スキンケア。卵は高いコスパで体の中も外もケアしてくれる優秀な食材です。
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【参考文献】
(※) Blusztajn JK, Slack BE, Mellott TJ. Neuroprotective Actions of Dietary Choline. Nutrients. 2017 Jul 28;9(8):815. doi: 10.3390/nu9080815. PMID: 28788094; PMCID: PMC5579609.