女性が一生のうちに卵巣から分泌される女性ホルモンの量はたったのティースプーン1杯ほど。ですがそんなわずかなホルモンに女性は心や体を大きく左右されます。
女性ホルモンは多ければ多いほどいいってものではなく、エストロゲンとプロゲステロンの適度なバランス関係が重要に。
そんな女性の美と健康にとって大きな存在であるホルモンバランスを整えるために必要な栄養素についてお伝えします。
2種類の女性ホルモン
脳からの指令で卵巣から分泌
女性ホルモンにはエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の2種類があります。
自律神経などをコントロールしている脳内の視床下部から脳下垂体へ指令をだし、脳下垂体が性腺刺激ホルモンを分泌して卵巣から女性ホルモンが分泌されます。
そのため自律神経と女性ホルモンは密接に関わっており、自律神経のバランスを整えれば女性ホルモンも適切に機能するようになります。
美しさをつくるエストロゲン
卵巣でつくられるエストロゲンは女性を美しくしてくれる働きがあることで知られていますね。エストロゲンの受容体は肌、脳、内臓、血管、骨など全身の細胞に存在しています。
エストロゲンは皮膚の真皮層にあるコラーゲンの生成を促し肌のハリや潤いを保ち、健やかな毛髪の成長を促して髪へ艶を与えたり、美しいヒップラインや豊かなバストなど女性らしい体づくりをサポート。
そして新陳代謝が高まり脂肪がつきにくくなったり、血管や骨の強化、コレステロールのバランス調整、記憶・学習機能の向上、認知機能の維持など脳全体の活性化という点でも重要な役割を果たしています。
妊娠力アップのプロゲステロン
プロゲステロンも卵巣からつくられますが、排卵後に卵巣に残された卵胞が変化してできる黄体から分泌されます。
プロゲステロンは排卵後から次の月経にかけて分泌量が増加。妊娠をしやすくする体づくりと共に、妊娠を維持すしようとする働きから、子宮内膜を柔らかくして着床しやすくしたり、流産しないように子宮環境を整えます。
そのため基礎体温が上昇し、乳腺が発達して胸の痛みを感じたり、皮脂の分泌が活発になり吹き出物や肌荒れを起こしやすい時期でもあります。
そして子宮を守るために体内の水分や栄養を溜め込むように働くため、お手洗いへ行く回数が減り、体がむくみやすく、便秘気味で太りやすくなったりも。月経前症候群(PMS)や腹痛もあらわれやすい時期。
また女性らしさをつくるエストロゲンばかり注目されがちですが、適切なプロゲステロンの分泌はエストロゲンとのバランスを調整し乳がんや子宮がんなど女性特有の病気のリスクを下げる働きがあります。
女性ホルモンに働きかける栄養素
大豆イソフラボン
大豆製品に含まれる成分、大豆イソフラボンは抗酸化作用のあるポリフェノールの一つフラボノイドで、天然の植物エストロゲンとも呼ばれています。
それは、体内で女性ホルモンのエストロゲンと同様の働きをしてくれるからです。 大豆イソフラボンのエストロゲン同様作用によって肌の水分量やコラーゲンの生成が促され、肌の弾力アップ・シワの改善、血管や骨密度の強化、生理不順を整え、更年期障害の緩和に良いとされています。
さらに大豆イソフラボンは、脂肪を燃焼したり、傷ついた血管の修復・再生をしてくれるホルモン「アディポネクチン」や、エストロゲンの分泌を活性化するとの研究報告もあります。
しかし大豆イソフラボンを摂取しても体内で効果を発揮できるのは個人差があるということ。その差は腸内に「エクオール産生菌」を持っているかいないかで違うというのです。
エクオール産生菌の働きによって大豆イソフラボンが「エクオール」という成分に代謝されることでエストロゲンのような効果がより高まると考えられています。
大豆イソフラボンをエクオール産生菌(腸内細菌の作用)によってエクオールに変換できるのは日本人では2人に1人、およそ50%前後。
自分がどちらのタイプかは、尿検査によって専門の機関で調べてもうらうことも可能です。 欧米人では20~30%ほどで日本人より少なく、また日本人の10代20代の若い世代では少ない傾向にあるそう。
これは日本古来の発酵食品や魚など和食中心の食生活をしてきた人の体内ではエクオールが作られやすいということが考えられています。
実際に、毎日納豆などの大豆製品を食べ続けている人は、そうでない人の2倍以上エクオールを作ることができるということ。
積極的に日々の食生活に味噌などの発酵食品や大豆製品を摂り入れていくことでエクオールが作られやすくなるといわれます。
大豆イソフラボンを多く含む食べ物
- 納豆
- 豆乳
- 豆腐
- おから
- きなこ
- 大豆
- 味噌
- 厚揚げ
若返りのビタミンE
ビタミンEは「若返りのビタミン」と言われるほど優れた抗酸化作用があることで知られていますね。
そしてビタミンEは脳下垂体や卵巣に作用する働きがあることから、女性ホルモンのバランスを整え、アンチエイジング成分として欠かせないビタミンでもあります。
肌や体の新陳代謝を活発にし、血行を促進して、シミ・シワの改善、動脈硬化や糖尿病予防など生活習慣病などの予防。女性ホルモンのバランスを整え、PMSや更年期障害の緩和にも効果が期待されています。
またビタミンEは脂溶性なので、純粋なオリーブオイルで調理したり、亜麻仁油を仕上げにかけるなど、良質なオイルと一緒に摂取することで体内への吸収効率がアップします。
さらにビタミンEはビタミンCとの相性が良く、同じく抗酸化作用のあるビタミンCと一緒にとると相乗効果でより高い抗酸化効果を期待できます。
ビタミンEを多く含む食べ物
- イワシ
- タラコ
- ハマチ
- 鮎
- 鰻
- アボカド
- アーモンド
- マカダミアナッツ
- かぼちゃ
- 小松菜
- ほうれん草
- ゴマ
美肌効果ビタミンB群
水溶性ビタミンに含まれるビタミンB群はビタミンCのほか、ビタミンB1、B2、B6、B12、パントテン酸、ナイアシン、葉酸、ビオチンの8種類の栄養素があります。
ビタミンB群は健やかな髪や肌の生成に不可欠な栄養素で、特に美肌効果が高いのはビタミンB2、B6です。これらは女性ホルモンのバランスを整え、エストロゲンの代謝を促進する働きにも優れています。
リラックス作用のあるセロトニンの生産を促す働きもあるので、生理前のイライラや情緒不安定になりやすいPMSの緩和に役立ちます。
卵にはビタミンCと食物繊維以外の栄養素がほぼ含まれています。良質なアミノ酸バランスがそろうので若々しい細胞をつくり、肌や髪、骨の新陳代謝を促進。そして卵に含まれるコレステロールは女性ホルモンの原料にもなります。
「卵は1日1個まで」「卵はコレステロール値を上昇させる」という健康常識は過去のもの。2015年厚生労働省は「食事からとるコレステロールは、血液中のコレステロールに影響を与えない」と発表しています。
卵は記憶力アップや美肌にも良い?卵の健康効果とスキンケア方法
ビタミンB群を多く含む食べ物
- マグロ
- カツオ
- イワシ
- 貝類
- 牡蠣
- ニンニク
- さつまいも
- 牛肉
- 豚肉
- 鶏肉
- レバー
- 大豆
- 卵
- 乳製品
- ほうれん草
- 小松菜
- トマト
キャベツのボロン
キャベツはガン予防に有効性のある野菜類としてアメリカ国立がん研究所が作成した「デザイナーフーズピラミッド」の上位に位置するほどキャベツの栄養価は優れています。
キャベツには老化や病気の原因物質である活性酸素を抑制するための体内の代謝酵素「SOD」の働きを高めてくれる作用があります。
この抗酸化酵素SODは若いうちは体内でつくられるのですが、加齢とともに減少してしまうので積極的に抗酸化力の高い食べ物などを摂取していくことがアンチエイジング、病気の予防にとって大切に。
キャベツの栄養素はビタミンC、ビタミンU、ビタミンK、カロテン、カルシウム、食物繊維などが豊富に。そしてエストロゲンの血中濃度を高める作用があるといわれている成分がミネラルのボロン(ホウ素)です。
キャベツに含まれるボロンにはエストロゲンの分泌を活性化してくれる作用があり、女性らしい体づくり、バストアップや骨粗しょう症予防、血管の強化にも効果的だといわれています。
ボロンをはじめ水溶性ビタミンなどの栄養素は熱に弱いので、加熱せずに生のままとり入れることがおすすめです。
オメガ3系脂肪酸
脂肪酸を大きく分けると2種類に分類されます。お肉や卵などの乳製品、ラードやバターなど動物性脂肪に多い飽和脂肪酸と、オリーブオイルや亜麻仁油など主に植物性由来のものとDHAなど魚油を含む不飽和脂肪酸があります。
この内、不飽和脂肪酸のオメガ3系脂肪酸はαリノレン酸(亜麻仁油、えごま油など)、魚油のDHA・EPA(マグロ、サバなど)を含む脂肪酸です。
オメガ3系脂肪酸は体内で合成することができない必須脂肪酸。 美肌効果や脳の情報伝達、血行促進、健康維持の為には欠かせない栄養素で、厚生労働省からも積極的な摂取が推奨されているほどです。
お肌や脳の細胞膜は脂質で構成されていて、オメガ3系脂肪酸は細胞膜を柔軟に、しなやかにしてくれる働きがあります。
細胞膜がしなやかになることで細胞内外のやりとりがスムーズになり、美肌効果や網膜の健康、脳の神経伝達機能の向上にもつながります。
女性ホルモンは卵巣から分泌されていますが、脳と密接に関わっています。脳の視床下部を通じて下垂体から卵巣へ指令が送られることで、女性ホルモンの分泌とバランスがコントロールされることに。
そのため脳の細胞膜が柔らかくなることで、卵巣への情報伝達がスムーズに行われ、ホルモンバランスが整いやすくなります。
例えばマーガリンやパン、菓子類などに含まれる自然界に存在しない合成されたトランス脂肪酸や、マヨネーズ・コーン油・ひまわり油などのリノール酸(オメガ6系脂肪酸)のとり過ぎは細胞膜を硬くしてしまい、腸内環境を悪化し免疫力が低下することにも。
その結果、ホルモンバランスの乱れ、老化の加速、がんや動脈硬化といった生活習慣病などのリスクが高まる可能性もあるので摂り過ぎに気をつけましょう。
食生活やときめきでホルモンバランスを整える
女性ホルモンのバランスを整える方法は食生活のほかにも、日々の生活の中で感動したりときめく気持ちもホルモン分泌に影響します。
これは恋愛を指すだけではなく、好きな趣味を楽しんだり、ときめくようなファッションやアイテムを身に着けたり、本や映画を見て感動するなど、こうしたことで脳が刺激を受けエストロゲンの分泌が促されることに。
また女性ホルモン分泌に指令を出す脳の視床下部は自律神経をコントロールする働きもあるため、ホルモンバランスを整えることは、自律神経を整え、免疫力を高めることにもつながります。
女性ホルモンのバランスを整える食生活や日常にときめくエッセンスを取り入れてホルモンバランスをキープしていきたいですね。