聖なるバジルとして知られるホーリーバジルはインドの伝統医学アーユルヴェーダにおいて数千年にわたり使用されているメディカルハーブです。
ホーリーバジルはさまざまな種類のストレスに対する適応力の調整をサポートするアダプトゲンハーブに分類され、免疫機能を高めたり、自律神経の調整、ホルモンバランスの調整、抗菌・抗炎症作用などの効果に期待できるといわれるメディカルハーブ。
数あるメディカルハーブの中でもホーリーバジルは多種多様な体の不調を助けるのに役立つ可能性のある卓越した存在で「ハーブの女王」としても知られています。
聖なるバジルとは
ホーリーバジル(トゥルシー)
聖なるバジルの意味を持つホーリーバジル(holy basil)はインドや東南アジアに自生するシソ科の植物で、和名でカミメボウキ(学名:Ocimum tenuiflorum)、ヒンディー語ではトゥルシーの名で親しまれています。
インドの伝統的なアーユルヴェーダ医学では、さまざまなハーブのもつ天然の有効成分を健康機能維持や体力の増進、病気の予防改善などに活用されてきています。
現代のライフスタイルはストレスに満ちています。不安や緊張、人間関係などの「精神的ストレス」をはじめ、睡眠不足、長時間労働、肉体疲労といった「身体的ストレス」、化学物質の多い不健康な加工食品、残留農薬、土壌汚染、遺伝子組み換え作物、電磁波、紫外線、放射線、大気汚染などの「環境的ストレス」にさらされています。
ストレス適応力を高めるハーブの女王
ホーリーバジルにはこれらのさまざまなストレスに対する適応能力や抵抗力を高めたり、細胞の酸化を防ぐ抗酸化作用、免疫機能の向上、解毒作用、アレルギー症状の緩和など多くの体の不調を改善する働きを持っています。
3000年以上アーユルヴェーダ医学で使用されているハーブの中でもその幅広い健康促進特性から、全てのハーブの中でホーリーバジル(トゥルシー)に匹敵するハーブはないといわれ「比類なきハーブ」「ハーブの女王」「生命の秘薬」としても知られています。(1,5)
ホーリーバジルの健康効果
ストレスバランスを整えるアダプトゲン
ホーリーバジルは不安や緊張といった精神的ストレスをはじめ、肉体疲労などさまざまなストレスを軽減し、精神的なバランスを整えるアダプトゲンとして機能します。
アダプトゲンとは副作用なく、ストレスに対する抵抗力を高め、心と体のバランス調整を助けるハーブという概念です。
強いストレスがかかったり、ストレスの多い生活が続くとストレスホルモンのコルチゾールが増加。コルチゾールはストレスと戦うために血圧や脈拍を上げて全身に酸素をおくりやすくしたり、血糖を上げて脳にブドウ糖が届きやすくするなどストレスから体をまもるために作用するホルモンです。
強力なアダプトゲンハーブ
一方で、コルチゾールは増え過ぎてしまうと脳の記憶を司る海馬を委縮させてしまったり、うつ症状、免疫機能の低下、女性ホルモンの乱れ、アレルギー症状の悪化、成長ホルモンの抑制、肥満、糖化促進、肌荒れなど健康や美容面においても多くの悪影響を及ぼしてしまうことに。
ホーリーバジルはコルチゾールの分泌量を正常に調整する働きがあり、身体のストレスへ対する順応力や抵抗力を高める作用があるといわれています。そのため精神的なストレスに強くなったり、代謝が上がり疲れにくくなったり、不安やうつ症状の緩和など、心と体の健康をサポートしてくれる効果に期待できます。
ホーリーバジルのもつ抗ストレス作用はアダプトゲンハーブの中でも卓越しており、強力なアダプトゲンだといわれています。(1)
免疫機能を高める
ホーリーバジルには免疫機能を調整し、免疫力を高めて、体がウィルス感染と戦うのに役立つ可能性があります。
健康な成人ボランティアを対象とした研究では、ホーリーバジルの葉の抽出物300mgを4週間毎日摂取した後に、免疫機能を司るリンパ球のヘルパーT細胞とナチュラルキラー細胞のレベルが増加したということです。
この研究では空腹時にホーリーバジルの葉を摂取すると免疫機能を有意に調節し、免疫力が高まると考えられています。(2)
記憶力や認知機能の向上
ホーリーバジルには記憶や脳の柔軟性、神経保護、認知機能の改善に効果的な可能性があると考えられています。
ホーリーバジルの抽出物を与えた動物実験では、脳の発達や記憶形成に関わる神経伝達物質アセチルコリンが大幅に増加したということです。(3,4)
アセチルコリンの増加は加齢にともなう記憶障害を改善し、脳の神経細胞の保護や認知機能、アルツハイマー病などの予防、症状の改善に役立つと考えられています。
ホーリーバジルの様々な健康作用
- ストレス対策
- うつ症状の改善
- 神経細胞の保護
- 免疫機能の強化
- アレルギー症状の緩和
- 抗炎症作用
- 抗酸化作用
- 抗がん作用
- 肝機能の強化
- コレステロール値の低下
- 血糖値の低下
- 関節痛の緩和
- 胃腸の保護
- 抗菌作用
- 血行促進
- 冷え性改善
- 疲労回復
- スタミナアップ
- 喘息症状の緩和
- 放射線保護
ホーリーバジルは体内の抗酸化酵素の活性を高める働きもあり、活性酸素の害から細胞を保護し、DNAの損傷を軽減してがん予防や老化予防にも作用します。
また肝臓の解毒酵素を活性化するため、体内に入ってきた有毒物質やアルコール、老廃物などの代謝や排出を促進。
注意点と摂取方法
ホーリーバジルはハーブティーやサプリメント等で摂取できます。副作用についての報告はないといわれていますが、妊娠中または妊娠をしようとしている場合、授乳中の女性、乳児、子供などへの使用を推奨するのに十分な研究はなく、医師に相談することが必要です。
ホーリーバジルのハーブティーはカフェインを含まないので、コーヒーや緑茶に含まれるカフェイン飲料のような身体的依存を引き起こさず、毎日安心してとりいれることができるといわれています。
ホーリーバジルでストレス対策
アーユルヴェーダの施術者は、ホーリーバジルは精神的ストレス、身体的ストレスの両方に適応する能力を高めるため、ストレスが原因で生じるさまざまな症状の対策としてホーリーバジルの定期的な摂取を推奨しています。(1)
私はホルモンバランスが変化しやすい黄体期にホーリーバジルのハーブティーを飲んでいます。情緒不安定になったりイライラしやすいなどのPMS症状が緩和されます。
【参考文献】
(1) Cohen MM. Tulsi – Ocimum sanctum: A herb for all reasons. J Ayurveda Integr Med. 2014;5(4):251-259. doi:10.4103/0975-9476.146554
(2) Mondal S, Varma S, Bamola VD, Naik SN, Mirdha BR, Padhi MM, Mehta N, Mahapatra SC. Double-blinded randomized controlled trial for immunomodulatory effects of Tulsi (Ocimum sanctum Linn.) leaf extract on healthy volunteers. J Ethnopharmacol. 2011 Jul 14;136(3):452-6. doi: 10.1016/j.jep.2011.05.012. Epub 2011 May 17. PMID: 21619917.
(3) Joshi H, Parle M. Cholinergic basis of memory improving effect of Ocimum tenuiflorum Linn. Indian J Pharm Sci. 2006;68:364–5.
(4) Jamshidi N, Cohen MM. The Clinical Efficacy and Safety of Tulsi in Humans: A Systematic Review of the Literature. Evid Based Complement Alternat Med. 2017;2017:9217567. doi:10.1155/2017/9217567
(5) Mondal S, Mirdha BR, Mahapatra SC. The science behind sacredness of Tulsi (Ocimum sanctum Linn.). Indian J Physiol Pharmacol. 2009 Oct-Dec;53(4):291-306. PMID: 20509321.