腸の働きが他の臓器に比べて重要だといわれているのは、身体の免疫機能をほぼ腸が司っているためです。
「腸と脳」「腸と肌」「腸と健康」は密接に関わっており、腸内環境によって様々な影響を受けます。
全身の健康を担っているといっても過言ではない腸の機能のすばらしさ、腸内環境を見直してみましょう。
腸と体の関係
腸は第2の脳
生物誕生の歴史では、最初に脳では無く、腸ができたのです。腸しかない生物からやがて脳ができて、あらゆる生物は腸を元に進化を遂げてきたと言われています。
腸が誕生したのは約40億年前ともいわれ、それに対して脳は誕生してからまだ5億年しかたっていないそうです。生物の歴史上では約9割は脳が存在していなかったことになります。
私たちの体も母体で最初につくられるのは腸です。その次につくられる脳は、腸が進化してできたとも言われるほどなので腸ってすごいです。
腸は脳や脊髄からの司令がなくても独自の神経系があり、腸自身の判断で消化吸収や毒素排出を行っているので、たとえ脳死の状態でも腸は働き続けることができるそうです。
全身の健康を担っている腸は第2の脳と言われていますが、第1の脳とも言えそうですね。
全身に影響を及ぼす腸の免疫機能
腸の働きが他の臓器に比べて重要だといわれているのは、それだけ腸は多岐に渡り重要な働きをしていて人の健康を大きく左右しているからです。
その中で最も重要視されているのが腸の大きな免疫組織と腸内細菌です。 身体の免疫機能と腸は深く関わっていて、なんと全身の免疫細胞の約70%以上が腸に存在しています。腸の免疫機能は全身の健康や美容に影響を及ぼす要といっても過言ではありません。
腸内細菌はおよそ1000種類、1000兆個もあるといわれ、この腸内細菌のバランスが老化や病気の予防、美容にとって大きく関わっています。
腸の善玉菌が減り、悪玉菌が増えて腸内細菌のバランスが崩れると、免疫機能が低下してしまいます。
免疫機能が低下すると、便秘や肌荒れ、老化促進、自律神経の乱れ、アレルギー症状の悪化、ウィルスに感染しやすくなったり、様々な体の不調や病気のリスクが高まります。
私たちの体内では外部から入ってくるウィルスや外敵を免疫反応で攻撃しています。 毎日3000個以上も体内で発生しているといわれる がん細胞は、免疫細胞(ナチュラルキラー細胞など)によってがん細胞の増殖を防いでくれているのです。
抗生物質や風邪薬に注意
それから抗生物質には注意が必要です。一部の感染症には有効ですが、大切な腸内細菌まで死滅させてしまうことになってしまいます。
風邪の原因ウィルスは抗生物質では殺せないし、高熱でなければちょっとした発熱など症状緩和の為に気軽に風邪薬を服用するのは控えた方が良いといわれています。
痛みや発熱はリンパ球が病原体と戦っているので、それを抗生物質によって抑えてしまえば腸内細菌が減少して、免疫力も低下してしまいます。
そして、風邪薬や鎮痛剤などは免疫力を高める副交感神経優位へと導くプロスタグランジンの産生を抑えてしまう働きがあるのでできるだけ控えた方が良いといわれています。
肌は内臓の鏡
毎日、肌を清潔に保ち、ビタミンや栄養バランスに気をつけ、スキンケアをしっかりとしているのに肌トラブルに悩まされているという場合は腸の免疫力が低下しているかもしれません。
腸内細菌のバランスが崩れ、腸の免疫機能が低下すると、体内の活性酸素の量が増え、排出機能が低下し腸内に毒素を発生させます。 そうなると便秘になるだけでなく、冷えを招いたり新陳代謝も低下します。
さらに排出できない毒素は血液中に流れ出し、全身をめぐり、皮膚表面から毒素を排出しようとします。 肌に必要な常在菌が減って、皮脂が過剰になったり、ニキビや敏感肌などの肌トラブルを引き起こしやすくなってしまいます。
また、体臭の原因となったり、粘膜系も弱ってくるので歯茎から出血しやすくなったりもします。 そして肌に必要な栄養素は腸で合成されるので、どんなに良いサプリメントや栄養成分を摂取しても腸の機能が低下していれば十分な吸収ができなくなってしまいます。
腸の免疫機能を活性化させて腸を元気にしてあげることが根本的な改善につながり、美肌だけでなく、大腸がんをはじめとした病気の予防、免疫力アップにつながります。
幸せを左右する腸内環境
脳の神経伝達物質であるセロトニンは、精神安定、ストレス緩和、幸福感をもたらすことから幸福ホルモンと呼ばれたりもします。
脳の神経伝達物質として知られているセロトニンですが、実はこのセロトニンは約90%が腸でつくられているのです。
さらに同じ神経伝達物質のやる気を引き起こしたり快楽物質であるドーパミンも原料の約50%が腸でつくられています。
セロトニンとドーパミンの前駆体(Lドーパ)が腸で作られ、腸内細菌によって血液脳関門を通過し脳内に運ばれて、セロトニンやドーパミンが合成され分泌されます。
セロトニンやドーパミンは食品から摂取したアミノ酸などの栄養素を元に合成されますが、腸の機能が低下していると消化吸収や分解が不十分となり脳内へ運ぶことができなくなってしまいます。
これらの神経伝達物質が不足すると、イライラしたりやる気がおきず、集中力の低下、認知症、パーキンソン病、うつ症状や不眠といったあらゆる不調や疾患のリスクが高まりやすくなります。
セロトニンやドーパミン生成の土台となる腸内環境を整え、腸内細菌を増やすことが、ストレスに負けない強い精神、心の安定へとつながり、そして幸福感をもたらしてくれるのではないでしょうか。
動物実験では、腸内細菌の増減で、性格が変わるとのデーターもあります。 腸内細菌を増やしたら、これまで消極的な性格だったタイプが積極的になったり、イライラしやすく短気なタイプでは温厚な性格になったというのです。
腸内細菌を増やすことで、腸内バランスが整えられ、セロトニンやドーパミンといった健脳のために必要な神経伝達物質の前駆体がつくられやすくなるからだと考えられています。
腸の老化が見た目年齢を上げる
腸内細菌のバランスが崩れ、腸内環境が悪化すると、腸の老化が進み、腸だけでなく肌や身体にも悪影響を生じ、見た目年齢を引き上げる要因になります。
老化や病気の原因である活性酸素を多く発生させるような生活をしていると腸内細菌が少なくなってしまいます。
腸内環境を整え、腸を若返らせるためには悪玉菌を減らし、加齢により減少しやすい善玉菌の代表であるビフィズス菌を増やすことが大切です。
腸内の善玉菌が増えると、便の悪臭やおならの臭いなどが軽減していきます。そして 見た目年齢が若い人は、腸も若くて元気だと言われています。
腸内細菌バランスを整える
腸内環境を整えるためには悪玉菌の餌となるお肉や糖分、酸化した油などを控えます。善玉菌を増やし活性化させるために、発酵食品や乳酸菌、オメガ3脂肪酸などを積極的にとりいれましょう。
野菜は生のままでもとりいれるとビタミンや酵素が破壊されず抗酸化成分をまるごと摂取することができます。そして乳酸菌は植物性(味噌、漬物など)の方が生きたまま腸に届きやすくなります。
腸が喜ぶ栄養素や心がける事
- 食物繊維を摂る(野菜、ゴボウ、椎茸、海藻類、こんにゃくなど)
- 様々な種類の野菜を多めにとりいれる(生野菜と温野菜を両方)
- 乳酸菌やビフィズス菌、発酵食品(納豆、味噌、醤油、塩麴、ぬか漬けなど)
- 発酵食品の効果を得る為に、天然の味噌や醤油を選ぶ
- 抗酸化食材の積極的な摂取
- ミネラルを強化
- 肉類を摂り過ぎない
- 乳製品を控える
- 糖分・糖質を控える
- オメガ3脂肪酸や純粋なオリーブオイルなど良質な油を選ぶ
- 急激な血糖値上昇を抑える為に食べる順番はベジファースト(野菜から)
- 加工食品やファーストフードなどを控える
- こまめに水分補給をする(糖分やカフェインの入っていないもの)
- 自律神経を整える為にストレス対策、十分な睡眠、規則正しい生活リズム
- 1日の中で空腹時間を作りミトコンドリアを活性化し免疫力を高める
- 禁煙
- 過度な飲酒は控える
- 適度な日光を浴びビタミンDを生成
- 適度な運動
腸は美と健康の要
肌が約4週間のサイクルで生まれ変わるのに対して、腸は約2週間のサイクルで生まれ変わります。
継続的に発酵食品や生野菜を積極的にとりいれ、腸内細菌を増やし、腸内環境を活性化していきましょう。
元気な腸が、免疫力や解毒力を高め、アンチエイジング、病気の予防、そして心の安定、幸福感へと導いてくれるでしょう。