ベジタリアンの中でも厳格なベジタリアンやビーガンなどの完全菜食主義者はアニマルウェルフェア(動物福祉)、環境配慮、健康志向から乳製品である動物性食品を食べません。
ですがベジタリアンでなくてもサスティナブルな食生活の高まりやエシカル消費、健康意識の高い人は、最近牛乳・ヨーグルト・豆乳などの乳製品離れが進んでいるのはなぜでしょうか。
牛乳は骨がもろくなる?
牛乳を飲むとカルシウムが補給できて、骨が丈夫になると思われている方が多いのではないでしょうか。確かに牛乳には豊富なカルシウムが含まれています。ですが、実は乳製品に含まれるカルシウムを人間の体はほとんど吸収できないといわれています。
牛乳のカルシウムはカゼイン(たんぱく質)と結合していて、人のたんぱく質と異なるため、消化・分解がしにくく、腸から吸収しにくいという性質が。
体内にカルシウムを吸収させるためにはマグネシウムやビタミンDも必要不可欠です。しかし牛乳にはマグネシウムがほとんど含まれていません。
適切なカルシウムを体内に吸収させるために必要なカルシウムとマグネシウムの摂取比率は1:1だといわれています。
そしてたんぱく質はきちんと消化されないと体内でアミノ酸として吸収することができないです。腸から吸収できなかったたんぱく質は腸内で腐敗が進み悪玉菌が増えて、善玉菌が減少し腸内環境が悪化しやすくなります。
腸内細菌叢が乱れると下痢や腹痛、便秘を引き起こしやすくなり、体の細胞に必要な栄養素の吸収を阻害してしまう原因になって、アレルギー症状の悪化、肌の老化、自律神経の乱れ、免疫力の低下などを招くことに。
それから牛乳にはリンが含まれています。リンは牛乳以外にも肉類など動物性食品や加工食品、冷凍食品、スナック菓子、甘いものにも含まれており、リンを摂り過ぎるとカルシウムと結合しリン酸カルシウムとして体内のカルシウムを排出してしまうのです。
乳製品と骨粗しょう症に関する研究では、牛乳やほかの乳製品、動物性たんぱく質などの摂取量が増えるほど骨がもろくなり、骨粗しょう症のリスクが高まるということが報告されています。(1)
牛乳を人間が飲むのは不自然?
また哺乳類の中で、自分と違う種類の動物のミルクを飲んだり、離乳期を過ぎてもミルクを飲む動物は、実は人間だけなのをご存知でしたか?
ミルクには人間の母乳であれ、牛乳であれ、親から新生児の成長や発達を促すべき高濃度のホルモン、ホルモン様物質、成長促進因子、酵素など数百種類もの成長に必要な成分が含まれています。
牛乳が悪い飲み物というわけではなく、栄養価の優れたすばらしい飲み物です。ただし子牛にとって。牛乳は子牛以外の動物が飲むようにはつくられていません。
牛乳の成分は人の母乳成分と大きく異なっています。たんぱく質、リン、カルシウムなどは牛乳の方が母乳より3倍以上多く含まれています。
牛乳は急速に成長する子牛(体重が1日に1kg増える)にとっては必要ですが、それはあくまで寿命20年の牛のためのもの。体重が1kg増えるのに1ヶ月かかる乳児にとっては未熟な腎臓に負担を与えるなど不適切ではないでしょうか。
離乳期後の人間にとっての牛乳は体を大きく成長させますがその反面、がん細胞の分裂や増殖を刺激することにもつながります。早発月経、乳がん、子宮がん、卵巣がん、甲状腺がん、前立腺がん、大腸がんなどの発症リスクとの関連が指摘されています。
乳がんを克服したプラント教授
大ベストセラーで有名な「乳がんと牛乳」の著者イギリスの地球科学研究者のプラント教授は、転移4回の進行性乳がんに侵されながらも、科学者として自らの病気の原因を研究し続けました。(2)
自分のこれまでの科学的視点、知識、経験を通してさまざまな研究や調査の上、ついに乳がんや前立腺がんの原因は乳製品だと突き止めるのです。
牛乳をやめてから現在まで彼女の乳がんは1度も再発していないそう。ただこの出版によって関係業界から批判・非難の嵐に見舞われました。ですが命がけで乳がんを研究したプラント教授は、医学に多大なる貢献をしたとして、ついに英国王立医学協会の終身会員となりました。
プラント教授の乳がんを予防する食事法は乳製品以外にも牛肉や豚肉、加工食品をやめて、有機飼育された鶏肉、平飼い卵、汚染されていない海域でとれた魚介類、海藻、大豆食品、純粋なオリーブオイルをとりいれ、新鮮な有機栽培の野菜や果物をたくさん食べるということです。
ヨーグルトやチーズ
牛乳からつくられるヨーグルトやチーズなども、いわれているほど健康には寄与しないという説もあります。牛乳に含まれている乳糖はグルコース(ブドウ糖)とガラクトースが結合した2糖類で、カルシウムは乳糖と結合しています。
離乳期以降は成長とともに乳糖を分解する酵素(ラクターゼ)が失われる人も多く、牛乳を飲むとお腹が痛くなったり、ゴロゴロしたり、下痢が起こるという場合は乳糖不耐症といわれます。
ヨーグルトやチーズは加工する過程で乳糖がグルコースとガラクトースに分解されているので、牛乳よりもお腹を下しにくいそうですが、このガラクトースという成分には老化を促進したり、寿命を縮める恐れがあるともいわれています。目の水晶体に蓄積して白内障の原因になる可能性もあるそう。
胃腸内視鏡で有名な新谷弘実先生は、ヨーグルトを食べる習慣のある人の腸相は意外と良くないと述べています。30万人の臨床データから乳製品や肉類の過剰摂取が多くの病気の原因であると言及されています。
アメリカ国立がん研究所の資金で行われた研究では、スライスチーズ、チェダーチーズ、クリームチーズを最も多く消費した人は、そうでない人とくらべて乳がんのリスクを53%増加させていることがわかっています。(3)(4)
豆乳と反栄養素
大豆は肉に匹敵する量のたんぱく質を含んでいるといわれることから「畑のお肉」とも言われています。一方で、大豆には反栄養素(アンチニュートリエント)と呼ばれる植物化学物質(フィトケミカル)が多く含まれているのをご存知ですか?
大豆に含まれる主な反栄養素はフィチン酸塩、酵素阻害物質、ゴイドロゲンと言われるもの。フィチン酸塩はカルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛など体に重要な必須ミネラルの体内吸収率を妨げてしまう作用があるのです。
酵素阻害物質はたんぱく質の消化に必要なほかの酵素の作用をブロックするので、体内でのたんぱく質の消化吸収が低下することに。ゴイドロゲンは新陳代謝を司る甲状腺の機能を弱めます。
これらの反栄養素は大豆を水に浸したり、加熱、発酵させるなど、加工過程において調理の手間や時間がかかるほど反栄養素の活性が失われていきます。しかし豆乳は大豆を水に浸し短時間で作られます。反栄養素は浸けた水に移っているので、豆乳には反栄養素がそのままたっぷりと含まれているのです。
豆乳だけでなく、お豆腐などの水気を多く含む大豆にも多くの反栄養素が残っています。昔ながらの製法で、時間をかけ発酵して造る味噌や納豆などの発酵食品には反栄養素の多くが取り除かれています。さらに大豆の栄養価が高くなり、体への消化吸収も良くなります。
私は味噌や納豆では症状が出ませんが、豆乳や大豆濃度の濃いお豆腐を食べると胃腸障害などアレルギー症状があらわれてしまいます。この症状は自然界からの警告だと捉え、大豆食品の中では味噌や納豆、醤油などの発酵食品を食べるようにしています。
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牛乳や乳製品は嗜好品として時々楽しむ
カルシウムは乳製品よりも小松菜やほうれん草など緑の濃い野菜からの方が吸収が良いです。体を構成している細胞は食べたもので日々つくられているので、我が家でもできるだけ自然にそった食生活に気をつけています。
乳製品につては賛否両論があります。私は子牛にとっての完全栄養食として設計されている牛乳を、大人の人間が飲むのは不自然だと思うのと、腸内環境改善、老化予防、アレルギー対策として乳製品を控えています。
神経難病の夫はこれまで牛乳が大好きで1日に何杯も飲んでいましたが、私がこのような乳製品の話をしたら牛乳をはじめヨーグルト、豆乳など乳製品全般を控えるようになりました。
そのほかオーガニックな食生活に変えたことも功を奏したのか、今までできなかった日常動作ができるようになったり、良い意味で体の変化を感じるようになってきたので乳製品断ちを継続することができています。
ただ完全菜食主義者ではないし、これは絶対食べちゃダメと決めつけ過ぎるとストレスになってしまうので、牛乳やチーズ、乳製品を使用したスイーツなどを時々食べることもあります。
牛乳を健康のために日常的に飲むのではなく、嗜好品としてたまにとりいれるぐらいが良いのではないでしょうか。
日々の食生活に気をつけていれば、体のリカバリー力が高いので週に1回くらいはチートデイをつくって好きなものを気兼ねなく飲んだり食べたり楽しむこともストレス解消になりますね。
【参考文献】
(1) American Journal of Clinical Nutrition|Should dairy be recommended as part of a healthy vegetarian diet?
(2) 乳がんと牛乳|英国王立医学協会終身会員・ジェインプラント
(3) Usual Consumption of Specific Dairy Foods Is Associated with Breast Cancer in the Roswell Park Cancer Institute Data Bank and BioRepository Published: 16 February 2017
(4) 認定NPO法人アニマルライツセンター