マグネシウムは体内のミネラルバランスを整えるうえで重要な役割を担っています。マグネシウムは数100以上もの酵素の働きを助けたり、骨の健康や血液循環、神経、筋肉などにも関与。
また二日酔いの原因となる有害物質アセトアルデヒドを分解するためにもマグネシウムは不可欠なミネラルです。
マグネシウムの特徴
マグネシウムは地球上の海や植物、動物、人間に含まれるミネラルです。マグネシウムは体内で4番目に豊富なミネラルでカルシウムやリンとともに骨や歯を形成したり、体や脳の健康に重要な役割を果たしている栄養素です。(1)
エネルギー代謝や酵素反応に関与
マグネシウムは体内で約60%が骨に貯蔵され、残りは筋肉や脳、神経、血液を含む体液に存在し、体内酵素の働きを助け、全ての細胞の機能に関与しています。
マグネシウムはエネルギーの代謝やたんぱく質の合成など、体内ではおよそ600以上もの酵素反応の働きをサポートしています。(2)
マグネシウムの働き
マグネシウムは体内で神経の興奮を抑えたり、心臓をはじめ筋肉の働きを良くするため心疾患等の予防、エネルギーの産生、血圧の維持、そしてビタミンB群とともに糖質、脂質、たんぱく質の代謝を助けています。
- 食品をエネルギーに変換したり、産生したエネルギーを効率よく利用する
- 脳の神経伝達物質を調整し、精神安定作用
- 睡眠の質向上
- PMS症状の改善
- ビタミンB群とともにアミノ酸から新しいたんぱく質などの合成に働く
- 腎臓などの軟組織にカルシウムが沈着するのを防ぐ
- 筋肉の動きを良くする
- 動脈硬化を防ぎ、心疾患、脳卒中のリスク低下
- 糖尿病予防
- DNAやRNAなど遺伝子のメンテナンスをサポート
- 体温や血圧を調節
- 骨の正常な代謝を維持
- 血液を固まりにくくする
- アルコールの代謝を助け二日酔い予防
- 便をやわらかくする下剤作用
カルシウムと密接な関係
私たちの体には数10兆個もの細胞があり、その一つひとつの細胞にカルシウムとマグネシウムがバランスのとれた割合で存在していることが重要です。
カルシウムが過剰になるとマグネシウムの吸収が阻害されたり、マグネシウムが不足すると骨からカルシウムが溶け出してカルシウムの値も低下してしまいます。
そのためカルシウムとマグネシウムはどちらも過不足なく食事などから摂り入れることが大切なのです。カルシウムとマグネシウムの理想の摂取バランスは2:1から1:1。
例えば牛乳を多く飲む人はマグネシウムも積極的にとりいれた方が良いでしょう。
マグネシウムが不足すると
マグネシウムが不足すると血管の収縮が起こり、血圧が上昇しやすくなったり、カルシウムの吸収も低下します。
- イライラしやすくなったり、集中力の低下、うつ症状
- 血栓ができやすく動脈硬化や心疾患、不整脈などをおこしやすい
- 骨や弱くなり骨粗鬆症や歯の形成不全
- 手足のしびれ、ふるえ、けいれん、まぶたがピクピク動く
- 足がつりやすい
- 高血圧
- 腎臓結石をおこしやすい
- 糖尿病発症リスクが高まる
- 肝機能の低下
マグネシウム不足の要因
マグネシウムは体内の数100もの酵素反応を助ける重要なミネラルですが、肉や加工食品、インスタント食品、スナック菓子類、清涼飲料水などに含まれるリンを多く摂取する現代の食生活は不足しやすい栄養素だといわれています。
リンはミネラルの一つですが、多くの食品に含まれているので通常不足することはなく、摂り過ぎるとカルシウムと結合してリン酸カルシウムとなり体外に排出されカルシウムやマグネシウムの吸収が阻害されてしまうことに。
またストレスの多い人はマグネシウムの必要量が増加。大量のアルコールを飲む人は、マグネシウムはアルコールの分解に必要なミネラルなので尿とともに多く排出してしまうことに。
利尿剤や様々な薬剤によってもマグネシウムは消費されやすくなります。
マグネシウムを過剰にとると
通常の食生活で過剰の心配はありませんが、マグネシウムは一部の下剤の主な成分でもあり、サプリメント等を大量に摂取すると下痢をおこしやすくなります。
マグネシウムは過剰にとっても腎臓から排出されますが、腎臓に障害のある人は過剰症に注意が必要です。
またパーキンソン病の場合、薬剤L-dopaの吸収を阻害してしまう恐れがあります。マグネシウムの多い硬水や食品は控えたり、酸化マグネシウム剤を服用の際はL-dopaとの同時摂取は避けて寝る前に服用するなど工夫が必要な場合も。
マグネシウムと健康
マグネシウムの摂取方法
マグネシウムは体の健康維持のために必要不可欠なミネラル。全米科学アカデミー食品栄養委員会の食事基準摂取量によるマグネシウムの推奨摂取量は1日あたり、大人の男性が400~420mg、女性は310~320mgです。
ストレスがある時やアルコールをよく飲むという場合はマグネシウムを意識してとるように心がけましょう。マグネシウムは食品とサプリメントの両方から摂取することができます。
わかめや昆布、焼きのりなどの海藻類にはミネラルが豊富に含まれています。市販のだしの素ではミネラルが減少しているので、昆布などでだしをきちんととるとマグネシウムをはじめ体に必要なミネラルを総合的にとりいれることができます。ミネラルはバランス良くとりいれることで体内に吸収されやすく、相乗効果がアップ。
またマグネシウムが豊富な硬水など一般的なミネラルウォーターのミネラルは体内に吸収されにくい無機ミネラルなので、食品から摂取した方が吸収されやすいです。
マグネシウムを含む主な食品
- アーモンド、カシューナッツ、ピーナッツ、かぼちゃの種
- ほうれん草
- 豆乳、豆腐、枝豆などの大豆製品
- ひじき、わかめ、昆布など海藻類
- するめ
- さば
- イワシ
- 玄米
- バナナ
- アボカド
- ダークチョコレート
マグネシウムはこんな方におすすめ
- ストレスの多い生活
- お酒をよく飲む人
- 肉や加工食品をよく食べている
- 足がよくつる人
- 骨や歯を強くしたい
- 生活習慣病を予防したい
- イライラしやすい人
マグネシウムは健康を維持するのに重要なミネラルですが多くの人が1日の推奨摂取量に足りていないといわれています。
特にストレスの多い人はマグネシウムの消費量が増えるため意識的に摂取することで、イライラの緩和につながりやすくなります。
また精神を安定させるので睡眠の質向上にも役立ちます。
マグネシウムとお酒の関係
マグネシウムはお酒とも深い関わりがあります。アルコールを分解するときにマグネシウムをはじめとするミネラル、ビタミンなどがどんどん消費されてしまうことに。
お酒を飲む量が多くなるほどその分消費量が増えます。体の調節に必要なマグネシウムなどのミネラルが水分と一緒に体外へ排出されてしまうと脳細胞の水分が減って、記憶を失ったり、頭痛や倦怠感といった症状があらわれたりします。
そしてマグネシウムは二日酔いの原因となるアセトアルデヒドの分解に必要不可欠なミネラル。そのためマグネシウムが不足するとアセトアルデヒドの分解を低下させてしまい、脳や肝臓、腎臓などにダメージを与えてしまうことになります。
日常的にミネラル摂取を意識
マグネシウムは単体でとるよりも他のビタミン・ミネラルも一緒にバランス良くとりいれることで体内に吸収されやすく、協力しあって効率良く働きます。
普段からマグネシウムを含むミネラル食品をバランス良くとりいれて体調を整えておくと、ストレス適応力が向上したり、たまにお酒を飲み過ぎても体のリカバリー力が高くなります。
【参考文献】
(1) Gröber U, Schmidt J, Kisters K. Magnesium in Prevention and Therapy. Nutrients. 2015;7(9):8199-8226. Published 2015 Sep 23. doi:10.3390/nu7095388
(2) de Baaij JH, Hoenderop JG, Bindels RJ. Magnesium in man: implications for health and disease. Physiol Rev. 2015;95(1):1-46. doi:10.1152/physrev.00012.2014