脂質は体を動かすエネルギーとなるだけでなく、全身の細胞の細胞膜の原料です。その細胞膜がどんな脂質(油)で構成されているかによってアレルギーを防いだり、美肌に導いたり、心や身体の健康へ影響を与える働きを持っています。
細胞膜の働き
細胞間の重要な役割
私たちの体を構成する全身の細胞はおよそ数10兆個あるといわれており、その一つひとつの細胞は細胞膜につつまれています。
細胞膜は体に必要な情報や栄養を取り入れたり、老廃物の排出、アレルギーや炎症(プロスタグランジン)にも関わる重要な働きをしています。
この細胞膜がやわらかく、膜の流動性が高いと細胞内外での情報伝達がスムーズになるため、脳の活性化、血行促進、アレルギー対策、すこやかな肌や髪の成長につながります。
脂質は細胞膜の原料
細胞膜の主要な構成成分は脂質とたんぱく質で、リン脂質が集まった2重層にたんぱく質が埋め込まれた構造をしています。
脂質は細胞膜の原料となるほか、血液や各種ホルモンの原料となったり、栄養素の吸収をサポートするなど重要な役割を果たしています。
脳にいたっては水分を除くと約60%が脂質で構成されています。脂質の種類や質によって細胞膜の性質は影響を受けるため、硬くなったり、やわらかくなったり、脂質の構成バランスで変化します。
そのため日々の食事で摂取している脂質(油)が脳をはじめ全身の細胞膜に置き換わるため、どんな脂質を選ぶかがとても重要になってくるのです。
良い油と減らしたい油
飽和脂肪酸
牛肉・豚肉・鶏肉など(パルミチン酸、ステアリン酸など)
飽和脂肪酸はバターやラード、肉類など動物性の脂質に多く含まれています。常温で固まる油なので、摂り過ぎると細胞膜が硬くなり血液のめぐりが悪くなったり、コレステロールや中性脂肪を増やし、脂質異常症や動脈硬化の原因となってしまいます。
一方、飽和脂肪酸の中でもココナッツオイル(ラウリン酸など)は酸化や熱に強く、エネルギー変換しやすい中鎖脂肪酸が多いためアルツハイマーなど脳の神経疾患の予防・改善やダイエットなどに効果を期待できます。
一価不飽和脂肪酸
オリーブオイルなどのオレイン酸(オメガ9脂肪酸)
オレイン酸はオリーブオイルに多く含まれており、酸化しにくいため加熱調理に向いています。必須脂肪酸ではありませんが、悪玉コレステロールを下げたり、便秘解消作用があります。
オリーブオイルを常食とする地中海沿岸地域の人々はアメリカや北ヨーロッパの人々と比べて平均的に健康長寿で心疾患、脳疾患などの発生率が低いといわれています。
健康効果を望める純粋なオリーブオイルを選んで摂り入れていきたい油ですね。
多価不飽和脂肪酸
大豆油、紅花油などのリノール酸(オメガ6脂肪酸)
体内でつくることができない必須脂肪酸の一つですが、コンビニ食や外食、調味料、サラダ油など身近なあらゆる油に含まれており、現代人は過剰摂取気味だといわれているため、減らしていきたい油。
摂り過ぎると細胞膜が硬くなり、善玉コレステロール値まで下げてしまったり、アレルギー症状などさまざまな炎症が悪化することが指摘されています。
魚油のDHA/EPA、亜麻仁油などのα-リノレン酸(オメガ3脂肪酸)
オメガ3脂肪酸は体内で合成することができず、積極的に摂り入れる必要のある必須脂肪酸です。
α-リノレン酸は体内に入ると酵素の働きによって一部がDHAやEPAに変換されます。オメガ3脂肪酸は冷たい海水でも魚の油が固まらないように、血液をサラサラにして動脈硬化を予防したり、美肌やすこやかな髪の成長、花粉症などのアレルギー対策にも役立ちます。
DHAとEPAは魚油に多く含まれています。DHAは特に脳の記憶力に関わるほか、網膜の脂質の約60%はDHAなので目にも大切な油です。
α-リノレン酸は亜麻仁油やえごま油、グリーンナッツ油などに含まれています。熱に弱く、酸化しやすいので生のままサラダなどにかけていただくと良いですね。
オメガ3で細胞膜を柔軟に
オメガ3脂肪酸によって細胞膜がやわらかくなると、細胞内に必要な栄養素をとりいれたり、老廃物を排出するといった細胞内外のやりとりがスムーズに行われるようになります。
その結果、脳の神経伝達物質の伝達能力が高まり、セロトニン量が増えて精神の安定やうつ症状緩和、記憶力アップ、認知機能、神経疾患の予防・改善など脳の機能が活性化しやすくなるのです。
肌細胞も細胞膜につつまれているので、細胞膜がやわらかくなると乾燥肌や湿疹、肌トラブルなどが改善し、ハリやうるおいもアップ。
血管を拡張して血流をスムーズにしたり、花粉症やアレルギー症状の炎症を抑える作用も。オメガ3脂肪酸は魚介類に多く含まれているので、私は週の半分以上は魚介料理を食べるようにしています。
また、せっかく魚料理を食べていてもオメガ6系の油をたくさん摂っているとオメガ3脂肪酸の効果が減ってしまうためオメガ6脂肪酸は控えることが大切です。