黒コショウに含まれる注目の成分「ピぺリン」の健康効果とは

黒コショウは世界中で最も広く活用されているスパイスのひとつで「スパイスの王様」とも呼ばれています。黒コショウには食品に風味を与えるほか「ピぺリン」という主要な有効成分が含まれています。

ピぺリンには天然の抗酸化物質が含まれ、細胞の酸化を防いだり、血流の改善などさまざまな体の機能を活性化する多彩な効果が期待され数々の研究やエビデンスが増えています。(1)

黒コショウについて

コショウ(学名:パイパーニグラム)は、インド原産のコショウ科コショウ属のつる性植物で、その果実を原料としスパイスとして活用されています。

収穫の時期や製法の違いによって黒コショウ(ブラックペッパー)、白コショウ(ホワイトペッパー)、青コショウ(グリーンペッパー)、赤コショウ(ピンクペッパー)などの種類に分けられます。

黒コショウは未成熟な緑色の実を皮ごと時間をかけて乾燥させ黒色に変色させたもの。コショウの中でも香りやスパイシーさが強く際立っています。

黒コショウはさまざまな料理との相性が良く、風味づけなどで活用されるほか、「ピぺリン」という体にとって有益な栄養成分が含まれています。

ピぺリンはアルカロイドの一種で黒コショウの辛み成分。ピぺリンには抗菌作用や防腐作用、抗酸化作用があるため、細胞の酸化を防いだり、血行促進、エネルギー代謝の活性化、食べ物からの栄養吸収を高めるなど健康機能に対するさまざまな生理活性作用が期待されています。

ピぺリンの健康効果

強力な抗酸化作用

黒コショウに含まれるピぺリンには強力な抗酸化物質が豊富で、過剰な活性酸素を抑制したり、活性酸素による細胞の酸化ダメージを防ぐ働きがあります。

人のがん細胞を対象とした試験管研究では、ピぺリンを含む黒コショウの抽出物はがんの発生に関わる細胞の損傷を最大85%抑制できることが示されています。(2)

また、高脂肪食を与えられたラットの研究では、黒コショウの有効成分であるピぺリンの補給が、高脂肪食によって引き起こされやすい酸化ダメージを軽減することができるといわれています。(3)

毛細血管の強化

人間の血管の99%は毛細血管で構成されています。健康な毛細血管は体中の各部位に必要な酸素や栄養を運んだり、ウィルスなどの感染を予防する免疫細胞なども全身にくまなく運んでいます。

通常、血管は内皮細胞(内側)と壁細胞(外側)がしっかりと結びついていることで血管の健康が守られている状態に。しかし、加齢やストレス過多、偏った食生活などで内皮細胞と壁細胞の密着がゆるみ、すきまができて、その結果老化した血管になってしまいます。

この血管の細胞を結びつける働きをしているのがTie2(タイツー)というもの。健康な血管では、壁細胞からTie2を活性化させる物質が分泌されていますが、加齢などによって分泌されにくくなります。

ピぺリンはこのTie2を活性化させる作用があるため、血管の健康を保つ働きがあります。

そのため傷ついた毛細血管を修復し、血行を促進して冷え性の改善、心血管疾患の予防、エネルギー代謝の活性化、免疫力の向上、アンチエイジングにも役立ちます。(4)ほかにヒハツやルイボス、シナモンにもこの作用があります。

栄養の吸収を高める

ピぺリンには、カルシウム、セレンなどの必須栄養素やクルクミン、カテキンといった抗酸化物質フィトケミカルの吸収を高める働きがあります。

肝機能をはじめさまざまな薬効成分をもつクルクミンは体内に吸収されにくい性質がありますが、ピぺリンを組み合わせた研究では、クルクミンのバイオアベイラビリティ(生物学的利用能)を2,000%まで向上させることがわかり、体内への吸収率を高める効果が報告されています。(5)

また、ピぺリンとコエンザイムQ10を摂取した研究では、コエンザイムQ10を単体でとりいれたのと比べて、コエンザイムQ10の血中濃度が上昇しました。(6)

ピぺリンには特定の栄養素やフィトケミカルなどの吸収と機能を高める働きをもつと考えられています。

食事にピぺリンパワーをプラス

クルクミンはカレーに入っている主な香辛料で、その強力な抗酸化作用、抗炎症作用に注目が集まり世界で最も研究されてきた食材です。

ただ市販のカレールゥには化学調味料やトランス脂肪酸が多く含まれているのでカレー粉やターメリック(クルクミン)パウダー100%を選ぶこともポイント。

黒コショウを料理にプラスして、ピぺリンで栄養素の吸収を高め、毛細血管の健康を保っていきたいですね。

 

【参考文献】

(1) Srinivasan K. Black pepper and its pungent principle-piperine: a review of diverse physiological effects. Crit Rev Food Sci Nutr. 2007;47(8):735-48. doi: 10.1080/10408390601062054. PMID: 17987447.

(2) Liu, Yunbao & Yadev, Vivek & Aggarwal, Bharat & Nair, Muraleedharan. (2010). Inhibitory Effects of Black Pepper (Piper nigrum) Extracts and Compounds on Human Tumor Cell Proliferation, Cyclooxygenase Enzymes, Lipid Peroxidation and Nuclear Transcription Factor-kappa-B. Natural product communications. 5. 1253-7.

(3) Vijayakumar RS, Surya D, Nalini N. Antioxidant efficacy of black pepper (Piper nigrum L.) and piperine in rats with high fat diet induced oxidative stress. Redox Rep. 2004;9(2):105-10. doi: 10.1179/135100004225004742. PMID: 15231065.

(4) Kumar S, Malhotra S, Prasad AK, et al. Anti-inflammatory and antioxidant properties of Piper species: a perspective from screening to molecular mechanisms. Curr Top Med Chem. 2015;15(9):886-893. doi:10.2174/1568026615666150220120651

(5) Shoba G, Joy D, Joseph T, Majeed M, Rajendran R, Srinivas PS. Influence of piperine on the pharmacokinetics of curcumin in animals and human volunteers. Planta Med. 1998 May;64(4):353-6. doi: 10.1055/s-2006-957450. PMID: 9619120.

(6) Badmaev V, Majeed M, Prakash L. Piperine derived from black pepper increases the plasma levels of coenzyme Q10 following oral supplementation. J Nutr Biochem. 2000 Feb;11(2):109-13. doi: 10.1016/s0955-2863(99)00074-1. PMID: 10715596.

 

食生活アドバイザー。スキンケアスペシャリスト。温泉ソムリエ。アラフォー女性健康美容ライター。 ストレスから睡眠障害、喘息発症、帯状疱疹を患う。夫は進行性の神経難病。 食生活やライフスタイルを見直したことで心身の良い変化を実感し、これまでの経験から難病の進行抑制、心と体の健康、エイジング対策探求に情熱を注いでいます。
投稿を作成しました 169

関連投稿

検索語を上に入力し、 Enter キーを押して検索します。キャンセルするには ESC を押してください。

トップに戻る