ポリアミンという物質は細胞の生まれ変わりを助けたり、バリア機能を高め、DNAの合成にも関わっています。
ポリアミンが減少すると新陳代謝が低下して老化が加速するなど、アンチエイジング物質としても注目を集めています。
ポリアミンとは
ポリアミンは「プトレスシン」「スペルミジン」「スペルミン」などの総称で、人間やさまざまな生物(微生物、植物、動物)の細胞内でアミノ酸から合成される物質です。
ポリアミンは主に細胞の増殖や修復など細胞の生まれ変わり、核酸(DNA・RNA)、たんぱく質の合成に関与し、細胞の健康を保ち、生命活動を維持するうえで欠かせない重要な存在。(2)
ポリアミンは膵臓、前立腺、肝臓、そして成長期など新陳代謝が活発で細胞分裂やたんぱく質の合成が盛んな組織に多く含まれています。
ポリアミンは細胞を元気にして若さを保ち、動脈硬化予防、炎症の抑制など、アンチエイジングに効果のある物質として注目されています。
ポリアミンは母乳の中に含まれる成分としても知られ、赤ちゃんの成長を促したり、記憶にも関わっているということ。
粉ミルクで育てた赤ちゃんにアトピー性皮膚炎や花粉症、喘息などアレルギー疾患を発症する割合が母乳で育てた赤ちゃんにくらべて高いことがわかり、現在では多くの粉ミルクにポリアミンが添加されています。
一方で、ポリアミンは加齢にともない体内での合成能力が低下し、減少してしまうことに。
ポリアミンが不足すると新陳代謝や細胞の修復に障害が生じ、さまざまな病気や老化の一因になっていると考えられています。
そのため不足したポリアミンは食べ物などから積極的にとりいれていくことが重要となります。
ポリアミンの健康効果
細胞の活性化アンチエイジング
ポリアミンは細胞の生まれ変わりに必要な核酸(DNA・RNA)と結合し、生体の重要な設計図である遺伝子が異常を起こさないように働く重要な役割をになっています。
そのためポリアミンが減少すると細胞の新陳代謝が遅くなったり、異常な細胞がつくられてしまう原因に。
ポリアミンの豊富な食品を摂取したり、体内のポリアミンレベルを高めることで細胞分裂が促進され、全身の組織の代謝が活発になります。細胞が元気になることで健康寿命をのばす可能性があると考えられています。(1)
そして加齢とともに遅くなってしまう肌のターンオーバー(皮膚細胞が入れ替わるサイクル)を促進する作用も。
正常な肌のターンオーバーサイクルは約28日間ですが、20代をピークに徐々に遅くなってしまうことが、肌老化の大きな要因のひとつ。
ターンオーバーが促進すると古く硬くなった角質などの表皮を取り除き、新しい細胞を生み出すため肌がやわらかくなり、保湿機能がアップしてシワやたるみの改善、シミ予防につながります。
血管の若さ抗炎症作用
ポリアミンには炎症を防ぐ強力な抗炎症作用があります。本来、炎症は病原細菌やウィルス、花粉、外傷などの異常事態に対して、感染や怪我から体を防衛する必要な生体反応です。
一方で、ストレスや活性酸素、炎症性食品などによって自覚症状の無い慢性的な弱い炎症があります。
慢性炎症は体内で静かに炎症が持続している状態のこと。炎症は酸化、糖化に次ぐ3つ目の病気や老化の最大要因ではないかといわれています。
ポリアミンは血管内皮の炎症を抑制するため、硬くなった血管をやわらかくして動脈硬化を予防し血流を改善。血行が良くなると血管の若さを保つことにつながり、免疫細胞も活性化しやすくなります。
そしてポリアミンの抗炎症作用によってヒスタミンなど炎症物質の発生を抑制するため、アトピーやアレルギー、喘息などの疾患症状を改善する可能性があると考えられています。
ポリアミンで細胞を元気に
ポリアミンは大豆の発酵食品(納豆、味噌、醤油など)やきのこ類に多く含まれています。アミノ酸のオルニチン(シジミ、しめじなど)や、アルギニン(大豆など)からも体内で合成されます。
また、腸内環境を良くしてくれる食物繊維などを多く摂っていると、腸内細菌が活性化されポリアミンの合成が促されます。(3)
20歳を過ぎるとポリアミンの合成能力は徐々に低下してしまうので、発酵食品やきのこ類、食物繊維を積極的に摂りいれて腸内環境を整え、体内のポリアミンレベルを高めていきたいですね。
【参考文献】
(1) Pucciarelli S, Moreschini B, Micozzi D, De Fronzo GS, Carpi FM, Polzonetti V, Vincenzetti S, Mignini F, Napolioni V. Spermidine and spermine are enriched in whole blood of nona/centenarians. Rejuvenation Res. 2012 Dec;15(6):590-5. doi: 10.1089/rej.2012.1349. Epub 2012 Nov 16. PMID: 22950434.
(2) Igarashi K. [Physiological functions of polyamines and regulation of polyamine content in cells]. Yakugaku Zasshi. 2006 Jul;126(7):455-71. Japanese. doi: 10.1248/yakushi.126.455. PMID: 16819267.
(3) Spermidine: a physiological autophagy inducer acting as an anti-aging vitamin in humans?