セレンは必須ミネラルのひとつで、体の組織の老化を遅らせたり、ビタミンEとともにコエンザイムQ10の生成を助け、抗酸化、免疫機能の向上に働きます。
セレンの働きとは
セレンは私たちの体にとって必要不可欠な必須ミネラルのひとつ。ミネラルはビタミンとともに微量栄養素と呼ばれ、わずかな量で体にとって重要な役割を果たす大切な栄養素です。
ミネラルは生体組織の構成成分となったり、体の機能を調整するなど重要な働きを持っています。しかし、体内では合成できないため、食べ物などから摂取しなければなりません。
セレンはたんぱく質と結合した形で体内にはおよそ13mg存在します。老化の原因物質のひとつに細胞膜の酸化によってできる過酸化物質があります。
セレンはこれを分解するグルタチオンペルオキシダーゼの構成成分であるため、生体組織の老化を防ぐ働きがあるのです。
また、ビタミンEや活性酸素分解酵素のスーパーオキシドディスムターゼ(SOD)とともに抗酸化機能に重要な働きを持ち、代謝や成長に欠かせない甲状腺ホルモンの生理活性や、コエンザイムQ10の生成、免疫システムなどをサポートしています。
セレンの主な体内作用
- 血管の老化を防ぐ
- 体の組織の柔軟性を保つ
- がんの抑制
- 酸化ストレスを減らす
- 心臓の健康を保つ
- 喘息症状を軽減
- 酸化から目を守る
- 認知機能や精神疾患の改善
- 甲状腺の健康に役立つ
- コエンザイムQ10の生成を促進
- 免疫システムの向上
- 老化予防
セレンが不足すると
セレンは通常の食事をしていれば不足する心配はありませんが、欠乏すると心筋症の一種の克山病や、発がんリスクが高まったり、免疫力が低下し老化が促進したりします。
- 免疫系の衰弱
- 心筋障害、動脈硬化、不整脈
- 発がんリスクが高まる
- 老化が早まる
- 生殖機能の低下
- 皮膚の乾燥
- 筋力低下
- 脱毛
- 倦怠感
- うつ症状
セレンの過剰摂取
セレンは健康のために必要ですが毒性の強い元素なので、サプリメント等で過剰に摂取すると、吐き気や脱毛、爪の変形、疲労感などの中毒症状を起こします。
1日あたりの推奨摂取量は55mcgで、1日の許容上限400mcgを超えないことが重要です(1)。土壌中のセレン濃度が高い日本での食生活では欠乏症になることはまれですが、サプリメント等からの過剰摂取には注意が必要です。
- 胃腸障害
- 爪の変形
- 脱毛
- 神経障害
- 倦怠感
- 皮膚障害
- 呼吸困難
セレンを含む食品
さまざまな食品にセレンは含まれていますが、特にシーフードに多く含まれています。植物性食品中のセレンの含有量は土壌のセレン濃度や栽培条件によって異なります。
- わかさぎ
- いわし
- かれい
- かつお
- まぐろ
- たらこ
- ほたて
- 牡蠣
- たら
- ネギ
セレンの主な健康効果
抗酸化作用で免疫力アップ老化予防
活性酸素は呼吸や代謝などのプロセスによって毎日体内で発生していますが、ストレスや加齢、病気、喫煙、過度な飲酒、睡眠不足などによって過剰に形成されてしまいます。
過剰な活性酸素は健康な細胞を損傷する酸化ストレスの原因に。酸化ストレスはがんや心疾患、脳疾患、免疫機能の低下、老化促進などのリスクを高めることに。
セレンは強力な抗酸化物質で、活性酸素酸を抑制するため、酸化ストレスによって引き起こされる細胞の損傷を保護します。
またセレンは、体のエネルギー生産や抗酸化に働くコエンザイムQ10の産生を助けたり、同じ抗酸化作用を持つビタミンEとともに摂取することで抗酸化力がさらにパワーアップし、免疫機能を高め、病気の予防、美肌効果、老化予防などに役立ちます。
精神や認知機能の改善
いくつかの研究で酸化ストレスはアルツハイマー病など脳の神経疾患の発症や進行に関与していると考えられています。アルツハイマー病の患者ではセレンの血中濃度が低いことを示しています。(2)
セレン含有量が豊富な魚介類の多い地中海型の食事を増やすことによって神経認知機能低下のリスクを低減し、精神機能の改善、記憶力の向上にも役立つとされています。(3)
甲状腺の健康をサポート
甲状腺はのどのあたりにある蝶のような形をしている臓器で、細胞を活性化させたり代謝を促進する甲状腺ホルモンを分泌します。
甲状腺は体の中で最もセレンの量が多い臓器です。セレンは抗酸化機能と甲状腺ホルモンの代謝に必要です。
セレンは甲状腺ホルモンの生理活性を高める働きがあり、健康な甲状腺は体の代謝機能を調節したり、成長や発育のために重要な役割を果たしています。(4)
他の抗酸化食と一緒に相乗効果
セレンは免疫システムを高めたり、酸化ストレスによる損傷から体を保護したり、代謝や甲状腺機能など体の健康機能において重要な役割を果たしています。
ビタミンE、Cやカロテノイドなど他の抗酸化食品と一緒にとりいれることで相乗効果が高まります。
ビタミンCはやっぱりすごい!最強の抗酸化ビタミン免疫機能や美肌に
【参考文献】
(1) Selenium Fact Sheet for Health Professionals
(2) González-Domínguez R, García-Barrera T, Gómez-Ariza JL. Homeostasis of metals in the progression of Alzheimer’s disease. Biometals. 2014;27(3):539-549. doi:10.1007/s10534-014-9728-5
(4) Ventura M, Melo M, Carrilho F. Selenium and Thyroid Disease: From Pathophysiology to Treatment. Int J Endocrinol. 2017;2017:1297658. doi:10.1155/2017/1297658