睡眠時間の重要性をわかっていても、日々の生活に追われて十分な睡眠時間を確保できないでいる方も多いのではないでしょうか。
中には人生やりたいことだらけで、夜たっぷり寝る時間がもったいない、と睡眠時間を削っている方もいます。
その気持ちもわかりますが、仕事の生産性を上げるにしても、100%何かを楽しむためにも、すべては万全の体調であることが前提としてあります。
現代の人々は以前よりも睡眠時間が少なくなっており、睡眠の質も低下しているといわれます。夜、しっかりと良質な睡眠をとることは、栄養バランスの良い食事や運動と同じくらい重要です。
睡眠不足は自律神経に影響
自律神経は各種ホルモンと連動しながら睡眠のリズムも整えています。リズムが整った質の良い睡眠は健康維持の基本です。
昼間の活動中は交感神経が働いていますが、夜になると交感神経が休んで、副交感神経が優位になります。そして睡眠中に全身の細胞を修復して、疲労を回復したり、体内を浄化し、自然治癒力を支えてえいます。
そのため睡眠不足が続くと体の修復ができなくなり、自律神経のバランスが崩れ、うつ症状や免疫力の低下にもつながりやすくなります。
睡眠で若返りホルモンアップ
私たちの全身の細胞は毎日、古い細胞と新しい細胞がスムーズに交換され、細胞の更新がされることで、すこやかな肌や髪の成長、体の健康へとつながっています。
ただ、細胞は働くことと、新陳代謝(生まれ変わり)を同時に行うことはできません。しっかりと熟睡している睡眠中に新陳代謝を活発にする成長ホルモンが分泌されるのです。
成長ホルモンは脳下垂体から分泌されるホルモンで、若返りホルモンともよばれています。成長ホルモンは細胞分裂を促進し、子供であれば骨や筋肉を成長させます。
大人の場合は傷ついた細胞を修復するので、疲れた内臓やお酒を飲んで代謝につかわれた肝細胞を再生したり、肌や髪も新陳代謝が活発になり新しい細胞に生まれ変わらせます。
成長ホルモンがきちんと分泌されている人は見た目も若々しいのです。成長ホルモンは入眠してから最初の3時間のノンレム睡眠中に最も多く分泌されます。
睡眠で免疫機能の改善
免疫システムの中心となる白血球のリンパ球は、起きている時よりも、休息時や睡眠中の副交感神経が優位になっている状態の時に、働きが活発になります。
免疫学の安保先生によると、夜12時までに就寝するようにするとリンパ球が短時間で増加して、免疫力が上がることが実験によって明らかになっているといいます。
睡眠不足な日々が続くと、風邪をひきやすくなったり、体の不調があらわれやすくなりますし、そんな時はしっかり睡眠をとることが大事ですね。
健康な男女153人を対象とした2週間の研究では、8時間以上の睡眠をとった人と比べて、7時間未満の人は風邪をひく可能性が3倍高くなるそうです。(1)
睡眠不足は体重増加
睡眠不足は肥満と関連しています。子供も大人も睡眠時間が短いと体重増加と肥満のリスクが高まります。(2)
睡眠中には脂肪を分解したり筋肉をつくっているので、睡眠不足が続くと成長ホルモンなど各種ホルモンの働きが低下して、脂肪の分解が遅れてしまうのです。
そして睡眠不足は食欲をコントロールするレプチンやセロトニンの分泌量も減ってしまうので、食欲が増進して、肥満や糖尿病、生活習慣病を引き起こす原因につながります。
睡眠中に酵素はつくられる
人の体内に5000種類以上も存在する酵素は、健康維持に欠かせないものです。酵素は食べ物の消化、吸収、解毒、排泄、新陳代謝、抗酸化作用など、あらゆる生命活動に関与しています。
いわば酵素は元気と若さの源でもあります。この酵素は主に睡眠中につくられているので、十分な睡眠がとれないと酵素が減ってしまうことに。
酵素は睡眠不足をはじめ、加齢、肉食、悪い油、添加物、白砂糖、喫煙、飲酒、ストレスなどが多くなるほどどんどん消費されていきます。
たとえばお酒を飲み過ぎれば、肝臓でアルコールを分解する酵素がたくさん消費されてしまいます。そうなると胃腸の消化吸収に必要な酵素が足りなくなり、二日酔いの不快な症状を引き起こす要因に。
酵素は睡眠中につくられるほか、生野菜、果物、海藻類、味噌など発酵食品にも含まれているので、十分な睡眠とバランスの良い食事を心がけることが大切です。
認知症のリスクを予防
認知症の発症に大きく関わっている主な原因は、脳内に異常なたんぱく質のアミロイドβが溜まってしまうことです。
アミロイドβは認知症を発症するかなり前から、蓄積がはじまっていて、ある一定のレベルまで溜まると症状があらわれてくるのです。
実は40代からこのアミロイドβの蓄積がじわじわとはじまっている可能性があるそう。
ですが、1日7~8時間の睡眠をしっかりとれている人ほどアミロイドβの蓄積が少ないことがわかっています。
記憶を整理整頓する
寝ている間は心身の疲れをとるほか、脳の休息時間でもあります。脳は昼間インプットした記憶や情報を、寝ている間に脳内では整理整頓されているのです。
短期間の睡眠不足は一時的に記憶能力が低下しますが、睡眠不足が長期にわたると、海馬と大脳皮質領域の構造変化に関わり、脳の機能がさらに低下する可能性が指摘されています。
子供も大人も良い睡眠は集中力、記憶力、独創性、問題解決能力を高め、あらゆる生産性が向上します。
運動選手もしっかり睡眠をとらせると、睡眠不足時と比べて多くのパフォーマンスがあがることがわかっています。
良い睡眠が生産性を高める!良質な睡眠のためにできる簡単な方法
良い睡眠で1日の生産性向上
どんなに体に良い食べ物やサプリメント、運動、エステ、マッサージなどをしていても睡眠不足ではだいなしです。
必要な睡眠時間は個人差がありますが、7~9時間程度です。
1日のあらゆるパフォーマンスを上げ、最適化するために、しっかりと良質な睡眠をとっていくことが大切です。
【参考文献】
(1) Cohen S, Doyle WJ, Alper CM, Janicki-Deverts D, Turner RB. Sleep habits and susceptibility to the common cold. Arch Intern Med. 2009 Jan 12;169(1):62-7. doi: 10.1001/archinternmed.2008.505. PMID: 19139325; PMCID: PMC2629403.
(2) Cappuccio FP, Taggart FM, Kandala NB, et al. Meta-analysis of short sleep duration and obesity in children and adults. Sleep. 2008;31(5):619-626. doi:10.1093/sleep/31.5.619