オーバーシュート

人間活動が地球の生産力を60%超過しているという驚異的な現状

今の私たち人間の生活活動は、かつてない地球環境の危機に直面し、地球の自然資源の限界を超えています。

地球環境と人の健康を維持するためには、地球の限られた資源、命をいただくことを最小限に減らし、消費活動の削減、CO2の削減、生態系の回復など、一人ひとりが日々の行動を考えていかなければなりません。

現在、世界中でサスティナブルな地球環境を実現するための取り組みが求められています。人や生物にやさしく自然環境を守る行動は、持続可能な開発目標(SDGs)の達成にもつながっていきます。

生きている地球レポート

「生きている地球レポート」は世界自然保護基金(WWF)が2年ごとに発行している地球の状態を示す報告書です。

世界の生物多様性の傾向を測る「生きている地球指数」(LPI:Living Planet Index)と、人間活動による資源消費と廃棄の観点での状況を示す「エコロジカル・フットプリント」(EF:Ecological Footprint)の2つの指標をもとに1996年から発表されています。

エコロジカル・フットプリントは「人間活動が地球の自然生態系を踏みつけた足跡」という比喩に基づいています。

生物多様性が68%減少

2020年9月に発行された生きている地球レポートでは、世界の生物多様性が過去50年で68%喪失したと伝えています。

地球全体で1970年から2016年にかけ、哺乳類、両生類、魚類、鳥類、爬虫類の世界的な個体数が平均68%も減少したということです。

中南米の熱帯地域では過去50年で野生生物の個体数が94%減少したことがわかりました。これは地球上で観測された中で最も大きく個体数が減少しています。

淡水野生生物種では1970年以降淡水の自然豊かさが劣化し、個体数は平均84%減少しています。淡水生態系は他の種よりも急激な減少がみられており、淡水魚の多くは絶滅の危機にさらされています。

2014年アメリカのブラウン大学における研究では、現在、種の絶滅は人類が誕生する前とくらべて、1000倍頻繁に起こっているといいます。

 IPBES(生物多様性と生態系に関する動向の評価)では、100万種以上もの動植物が絶滅の危機に瀕しており、人類史上かつてないほどの脅威にさらされているということです。

さらにエコロジカル・フットプリントでは、人間社会の消費活動は地球が1年間に生産できる範囲を60%も超過していると警鐘を鳴らしました。

1970年以降、人間社会による資源消費や廃棄の量は地球生物が生産し吸収できるバイオキャパシティーを超え、オーバーシュート(需要超過)の状態が続いています。今、人間の需要が地球の供給能力を超過し、地球の資源が失われ続けている状態なのです。

地球の生物生産力を超えた現在のような生活を人間が維持するには地球1.6個分の自然資源が必要であるということです。

人々の行動が変われば環境負荷も変化

一方、報告書で2020年は新型コロナウィルスの影響により、エコロジカル・フットプリントは約10%減少するといわれます。

これは、人々の移動や消費行動が抑えられたことに起因するもので、人々の行動が変われば環境負荷も変化することが図らずもわかる機会となったとしています。

また、海洋研究開発機構と名古屋大などの研究では、世界各国が実施したロックダウン(都市封鎖)によって、工場や自動車などから排出される窒素酸化物(光化学スモッグや酸性雨の原因)が、地球全体で少なくても15%減少したということ。

温室効果のある地上から高さ約10キロまでの対流圏のオゾン(生物にダメージを与える悪いオゾン)も、2%減少していることがわかりました。

オゾン層のある成層圏ではオゾン濃度の減少が問題となっていますが、地上近くの対流圏オゾンでは反対に濃度が増加し続けています。

工場や自動車から排出される窒素酸化物などの汚染物質が太陽光による光化学反応によって発生したり、世界の自動車台数が伸びるとともに窒素酸化物の排出量が激増していることなどが原因に。

温暖化対策といえばこれまで二酸化炭素削減が一般的でしたが、ロックダウンによって窒素酸化物などの汚染物質排出を減らすことも実効的であることが確認できたということです。

地球のために私たちができること

”専門家たちは、世界の生物多様性の喪失の60%、そして二酸化炭素排出量の約4分の1は農業によるものであることから、地球を守る最良の方法のひとつは、世界的な食料システムの変革だと考えています。”

私たち一般消費者が持続可能な暮らしをおくるためにできるライフスタイルとは

  • 食品ロスを削減することで二酸化炭素排出量を減らす
  • 肉や乳製品の摂取量を減らして、健康増進、温室効果ガスを削減
  • 遺伝子組み換え作物や農薬を使用した食材を購入しないことで健康も自然環境も守る
  • 物をシェアしたり新たに購入しない、消費を減らすことで廃棄物の削減
  • エコバックやマイボトルの使用
  • プラスチック包装、ビニール袋、ラップなどプラスチック製品の使用を減らす
  • 地産地消を意識し、長距離輸送での二酸化炭素排出量を削減
  • 宅配便の再配達を減らし、ペーパーレス化、二酸化炭素排出量の削減
  • 揚げ物など使用済みの油は吸水シートなどで拭き取り、排水による汚染を減らす
  • 合成洗剤、化学繊維、室内や庭で使う化学物質などの使用をできるだけ減らす

これらの取り組みを一人ひとりが意識し、やがて多くの人々が行うことで、地球環境への害を減らすことができます。

地球の生物多様性を回復し、人間という生物が生き延びるために、物質的豊かさというひとつの価値観を変えることにも必要性を感じます。

物の豊かさよりも、自然環境とのつながり、身近な人たちとの関係、良質な食べ物など心と体の健康を豊かさの指標として、少ない消費でより健康になる。

心と体の健康に価値を見出すことで、地球上の微生物も野生動物も人間も自然環境全てが豊かに循環していけると良いなと思います。

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【参考文献】

食生活アドバイザー。スキンケアスペシャリスト。温泉ソムリエ。アラフォー女性健康美容ライター。 ストレスから睡眠障害、喘息発症、帯状疱疹を患う。夫は進行性の神経難病。 食生活やライフスタイルを見直したことで心身の良い変化を実感し、これまでの経験から難病の進行抑制、心と体の健康、エイジング対策探求に情熱を注いでいます。
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