魚に含まれるDHA・EPAといったオメガ3系脂肪酸は脳をはじめとする神経組織に多く含まれ、脳の機能を高める健脳効果や血液をサラサラにして動脈硬化などを予防したり、健康や美容、免疫機能においても役立つことが知られています。
さらに最近の研究では魚に含まれる成分がパーキンソン病にも有効である可能性があるということです。
オメガ3系脂肪酸とは
脳の栄養素といわれているオメガ3脂肪酸の「DHA・EPA」は、私たちの体内で生成することができない必須脂肪酸です。
体全体の細胞はおよそ37兆個の細胞で構成されており、その細胞膜の大部分は脂質で構成されています。 水分を除くと脳の約60%は脂質で出来ていて、毎日食べている脂質(油)が細胞膜の原料となり、お肌や脳、ホルモンや血液、そして全身37兆個の細胞膜を作っています。
細胞膜を構成する重要な要素である脂質。すこやかな毎日をおくるために良質な脂質を選んでいきましょう。
脂肪酸の種類
脂肪酸の種類によって体への影響が異なります。脂肪酸を大きく分けると2つに分類されます。
お肉や卵などの乳製品、ラードやバターといった動物性脂肪に多い飽和脂肪酸と、オリーブオイルや亜麻仁油など主に植物性由来のものと、魚油を含む不飽和脂肪酸があります。
飽和脂肪酸は体内で作られるコレステロールの元となり、動物性脂肪の摂取量が多くなると悪玉コレステロールが増加してしまうので、できるだけ控えたい油。
避けた方がいい油は自然界に存在しない「トランス脂肪酸」です。諸外国では規制されている油ですが、日本では植物油を加工して作られるマーガリンやショートニングなどに今も使われており、パンや菓子類によく含まれています。細胞膜に取り込まれると動脈硬化、アレルギー、がん、脳へも悪影響を及ぼし、認知症のリスクを高めることにも。
不飽和脂肪酸
不飽和脂肪酸は次の3つに分類されます。
- オメガ3系→ αリノレン酸、DHA・EPA(体内で作られない多価不飽和脂肪酸)
- オメガ6系→ リノール酸、アラキドン酸など(体内で作られない多価不飽和脂肪酸)
- オメガ9系→ オレイン酸(体内で作ることができる一価不飽和脂肪酸)
必須脂肪酸
不飽和脂肪酸のうち、オメガ3系とオメガ6系の脂肪酸は体内で作ることができないので、食事などから摂取することが大切なため、必須脂肪酸と言われています。
一方、オメガ6系脂肪酸は必須脂肪酸と言われていますがコンビニや外食、加工食品、調味料など、あらゆる身近な食品に含まれている油。 現代の私たちの食生活では過剰摂取気味だといわれているので意識的に摂る必要はないでしょう。
摂り過ぎは、動脈硬化や心疾患等の生活習慣病、肥満、アレルギー・アトピー疾患、精神面にも影響を及ぼし、さまざまな身体の不調の原因となる可能性が高まるので注意。
オメガ3系脂肪酸
一方で、オメガ3系脂肪酸はαリノレン酸(亜麻仁油、えごま油など)、DHA・EPA(マグロ、サバなど)を含む脂肪酸で、食生活が欧米化した現代人には不足気味な油。
オメガ3系脂肪酸は体内で合成することはできず、脳の健康をはじめ美肌、精神面、老廃物の排出、アレルギー症状の緩和など、健脳や美容面、免疫システムにおいても欠かせない成分です。
厚生労働省からも積極的な摂取が推奨されており、食事や健康補助食品等で意識的に日々の食生活に摂り入れたい油です。
DHA・EPAとαリノレン酸
DHA・EPAとは
必須脂肪酸のオメガ3系脂肪酸のDHA(ドコサヘキサエン酸)と、EPA(エイコサペンタエン酸)。
同じオメガ3系のαリノレン酸が多い植物由来の亜麻仁油やえごま油と違い、DHAやEPAは青魚などの魚の油に多く含まれています。
DHA・EPAは脳の機能を高める健脳食。脳の中枢神経系をはじめ目や皮膚に多く含まれる脂肪酸で、細胞膜を構成したり、美肌や健康を維持するうえでも重要な役割を果たす油です。
αリノレン酸との違い
αリノレン酸は亜麻仁油やえごま油などに含まれるオメガ3系の脂肪酸。αリノレン酸は体内に入ると、一部がEPAに変換され、次にDHAに変換されます。
しかし、体内で変換される量は個人差があり、またその量はわずかだということ。DHA・EPAの効果を望むなら、最初からDHA・EPAを含むものをダイレクトに摂取した方が良いですね。
魚油による脳と健康効果
DHAは脳の発達や機能を高める
脳内には有害物質などの侵入を防ぐために血液脳関門というバリア機能が存在します。
この関門を通過できるのは、ブドウ糖やアミノ酸など脳のエネルギー活動に必要な限られた物質が多い中、DHAもここを通り、脳内へ入ることができる数少ない物質です。
EPAは血液脳関門を通過することはできませんが体内でDHAに変化することもあります。脳は約140億個の神経細胞で構成されており、DHAはこの細胞膜を構成しています。
DHAは冷たい海水でも固まらない特性があることから血液をサラサラにするといわれる所以。そのため脳内に取りこまれると、細胞膜を柔軟にしなやかにします。
神経伝達物質の受容体は細胞膜にあるので細胞膜が柔らかくなることで、神経細胞間の情報伝達機能がスムーズに行われやすくなるのです。
DHAは情報伝達を担う脳の神経細胞のニューロンをはじめ多くの神経組織に含まれているため脳の機能の発達を助け、記憶力アップや認知機能など脳全体の向上に役立ちます。
そして、DHAは網膜の約40~60%も構成しているので、目の健康維持にも欠かすことのできない成分です。
パーキンソン病に有効な可能性
これまでオメガ3系脂肪酸が脳に良いということは有名でしたが、魚に含まれるパルブアルブミンというたんぱく質がパーキンソン病に有効な可能性があるという研究があります。
パーキンソン病の特徴のひとつとして脳内にαシヌクレインというたんぱく質の一種が凝集されてしまい、ドーパミンの分泌が徐々に減少。パルブアルブミンはこの有害なたんぱく質が形成されるのを抑制するのに役立つ可能性があるということです。(※)
一方でたんぱく質を多くとると体内で分解し血中のアミノ酸が増加。そうなると血液脳関門を通過する際にパーキンソン病の薬剤L-dopaとアミノ酸が競合し、L-dopaの吸収が阻害され薬の効果が効きにくくなってしまう場合があります。(個人差あり)
そのため日中のたんぱく質摂取はできるだけ控えて、夕食時に1日に必要なたんぱく質を摂取するという蛋白再分配療法が有望な治療法のひとつとして提唱されています。
我が家では夫がパーキンソン病を罹患。焼肉や鶏の唐揚げなど肉料理をたくさん食べ過ぎると、薬の効果が消失するオフになる想定時間が約30分短縮されてしまうことに。
これまでの経験から肉類を食べる時は150g程度までと決めたり、またお肉よりも魚料理を多く食べるような食生活を心がけています。肉食が多かった頃と比べて今の方が調子も良いですね。
肉類をたまにいただく時は体にやさしく高酸化力のあるオーガニックミートやグラスフェッドのビーフ、グラスフェッドバターなどを選んでいますよ。
一方、パルブアルブミンはシーフードアレルギーの主な原因物質としても知られているので、魚介類にアレルギーのある方は注意が必要です。
グラスフェッドビーフやグラスフェッドバターの人気が高まっている理由
DHAとEPAで血液サラサラ
DHAは細胞膜や血管をしなやかにし、EPAは血小板凝集抑制作用により(いわゆる血液サラサラ効果)血管を拡張し、血栓を予防します。
細胞膜が柔軟になることで血流が改善され、高血圧・中性脂肪・コレステロール値を下げ、動脈硬化、心筋梗塞、脳梗塞などのリスクを下げ、老廃物の排出もスムーズに。若々しい肌や健やかな髪の成長もサポート。
さらに、神経細胞間の情報伝達機能が高まることで脳の神経細胞を活性化。そして自律神経を整え免疫システムを強化したり、心の安定にも影響します。
また、青魚を多く食べる習慣のある人は、炎症体質を改善し、がんの発症リスクを下げ、アレルギー疾患や喘息症状の緩和にも有効だとされています。
酸化しやすいDHA・EPA
オメガ3系脂肪酸であるDHA・EPAは主に青魚に多く含まれており、(マグロ、サバ、ブリ、カツオ、イワシなど)熱に弱く酸化しやすい特性があります。
そのためできるだけ生のお刺身で食べたり、短時間でさっと加熱した魚料理にして食べると良いですね。 また酸化還元力のあるビタミンCや抗酸化力のある食材を一緒に食べると酸化を防いで吸収率も良くなります。焼き魚にはレモンを添えるなど。
一方、大型の魚になるほど食物連鎖の過程で水銀や汚染物質の蓄積が懸念されるという心配もありますが、食べ過ぎなければ問題ないと言われています。
サクラエビやオキアミなどは食物連鎖の観点から下位にいるので水銀や汚染の心配が低く、大型マグロにくらべたら少ないですがDHAが含まれ、肝機能に良いタウリンやカルシウムも豊富。
そして普段から食物繊維やミネラル豊富な食事を意識することで、体内毒素の排出力を高めてくれるので免疫力アップにも役立ちます。
現代人はミネラル不足!ミネラルを補給して免疫力・排出力を高める
すこやかな脳と身体へ
年齢とともに脳細胞は減少するといわれていますが、お肉よりも魚を多く摂取している食生活の方が、脳細胞は活性化しやすくなるということがわかっています。
そして地球上で最も汚染されていない南極海に生息する南極オキアミから抽出したクリルオイルは強力な抗酸化パワーを持つアスタキサンチンとDHAが豊富。
魚料理やクリルオイルを日々の食生活に摂りに入れて、年齢とともにすこやかな脳と身体を育んでいきたいですね。