ミネラルは体の健康維持や成長に欠かすことのできない微量栄養素です。
ミネラルは各種ホルモンの働きを助けたり、消化、吸収、代謝、排泄など、あらゆる生命活動を支えている酵素の働きにも関わっています。
体の健康維持に欠くことのできないミネラルですが、現代人は不足傾向にあり、ミネラルの欠乏が現代病を招いているともいわれています。
人の健康に不可欠なミネラル
ミネラルは5大栄養素のひとつ。たんぱく質・脂質・炭水化物とは異なり、熱やエネルギーをつくる栄養素ではありませんが、わずかな量で体の機能に重要な役割を果たす微量栄養素です。
私たちの体は全身数10兆個の細胞で構成されており、生命活動に必要なエネルギーの生成、生命維持のための代謝、組織の修復や構築が毎日行われています。
これらの働きに欠かせないのが体内に5000種類以上ある酵素反応で、この酵素のほとんどの働きにミネラルは関わっているのです。
食べることは生きること。日々の食べ物を消化・吸収し、そこから生きていくために必要なエネルギーをつくり、不要なものを排出していくという生きるために必要な代謝をミネラルは助けています。
脳の神経伝達物質の働きや、性ホルモンの正常な分泌、ビタミンの合成にも必要です。オメガ3脂肪酸やフィトケミカルの吸収を促進する働きも。
そのためミネラルの働きは精神や脳の働きに関与したり、若々しい素肌や健やかな髪の成長、免疫力（健康）にも影響するというわけです。
現代人はミネラルが欠乏
体のあらゆる機能を支え、健康の基盤となるミネラルですが、人間も、ほかの動物も、植物も、体内でミネラルをつくることができません。
土壌中のミネラルを植物たちは吸収し、動物はその植物を食べ、人間はこれらの動植物を食べることでミネラルを体内に取り込んでいます。
ですが、今その植物たちが育つ土壌に含まれるミネラルは急激に減っています。
農薬や化学肥料の使い過ぎ、遺伝子組み換え作物、ハウス栽培、水質汚染などさまざまな原因により、土壌が劣化し、ミネラルを始めビタミンなどの栄養価が大きく低下しています。
ほうれん草ではこの50年で鉄分が85%も減少するなど、多くの野菜や果物からミネラルや栄養素が失われてしまっているのです。
スーパーやコンビニの加工されている野菜サラダなどは、次亜塩素酸等で消毒されているためミネラルやビタミンが流出しています。
料理に使う出汁パックは酵母エキスなど人工的なうま味が添加され、ミネラルを補給できません。
食品添加物を多く使用しているコンビニ弁当、出来合いのお惣菜、加工食品、インスタント食品、ジャンクフードなどの食べ過ぎも骨からカルシウムが流出し、ミネラルが不足する原因に。
例えば、ミネラルのひとつである亜鉛が不足すると、脳下垂体でつくられる性ホルモンの分泌量が低下します。
男性であれば精子の形に異常をきたしたり減少を招き、女性は月経周期の乱れ、不妊症、貧血、低体温などを引き起こしやすくなったりします。
海藻ミネラルで排出力を高める
海の中には45種類以上ものミネラルが豊富に含まれています。
昆布、わかめ、もずく、ひじき、海苔などの海藻類にはカルシウム、カリウム、ヨウ素、マグネシウムなどの必須ミネラルが全て含まれており、海藻はまさに天然ミネラルの宝庫です。
そのほか海藻類にはビタミンA、C、Eや、フラボノイド、カロテノイドといった抗酸化物質を含み、体の細胞を酸化ストレスによる損傷から保護し、アンチエイジング効果も。
特に昆布やわかめには近年注目されている強力な褐藻ポリフェノールのフコキサンチンとフロロタンニンが豊富に含まれています。
フコキサンチンはなんと、ビタミンEの13.5倍もの抗酸化力を持っており、ビタミンA（β-カロテン）よりも細胞保護効果が高く、目や皮膚、のど、鼻などの粘膜を丈夫に保ちます。（※）
料理に使う出汁の素は今たくさんの種類があり、出汁をとらない家庭が増えてきていますが、前夜に下準備をして昆布と煮干しで出汁をとれば、十分なミネラルを補給することができますよ。
わかめなどは、お酢やレモンと一緒に食事にとりいれると体内への吸収率がアップ。ミネラルは人体に有害なミネラル（水銀、鉛など）の吸収を妨げたり、体内毒素の排出を促進し、免疫システムを高めてくれます。
また、高含有量のミネラルサプリメントではヨウ素など過剰症になる心配があるので注意。野菜や果物はミネラルやビタミンが豊富な無農薬栽培のものを選びたいですね。
生命組織に欠かせないミネラルの重要性「ミネラルは栄養の世界のシンデレラ」
【参考文献】
（※） Mikami K, Hosokawa M. Biosynthetic pathway and health benefits of fucoxanthin, an algae-specific xanthophyll in brown seaweeds. Int J Mol Sci. 2013;14(7):13763-13781. Published 2013 Jul 2. doi:10.3390/ijms140713763
