ナイアシンで心の安定・二日酔い対策・老化予防も?ナイアシンとは

ナイアシン(ビタミンB3)は心血管疾患を予防したり、神経や皮膚の健康、うつ症状やアレルギー症状の緩和、中性脂肪・コレステロールの低下、アルコール分解の代謝促進、血流改善、アンチエイジング効果など多くの優れた健康効果に期待できるビタミンです。

ナイアシンについて

ナイアシンとは

ナイアシンはビタミンB群の一種です。

ナイアシン(ニコチン酸)とナイアシンアミド(ニコチン酸アミド)の2種類があり、総称して「ナイアシン」「ビタミンB3」とも呼ばれています。

ニコチン酸はたばこに含まれる有害なニコチンの影響を思わせてしまう恐れがあり、またビタミンB群は種類が多いため混乱しないよう「ナイアシン」と呼ばれるようになったともいわれています。

ナイアシンの働き

ナイアシンは細胞のエネルギー代謝に必要な必須栄養素。ナイアシンは体内で働く酵素を助けることにより、食品から摂取した糖や脂質をエネルギーに変換するのをサポートします。

ナイアシンとナイアシンアミドはどちらも生命維持活動に欠かせない代謝酵素のNAD(ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド)、NADP(ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチドリン酸)を継続的に産生するために重要な役割を果たしています。

ナイアシンはコレステロール値を下げたり(ナイアシンアミドはコレステロールを低下させません)細胞内のNAD増加効果がより高いため、ナイアシンの方がナイアシンアミドよりも病気の予防・改善や健康効果に期待できます。

ナイアシンは全身で500種もの酵素を助ける補酵素として働き、エネルギーの生産、抗酸化作用、皮膚や神経の健康、ホルモンの生成、DNAの修復などにも関わっています。

ナイアシンは食べ物から吸収するほか、肝臓で必須アミノ酸のトリプトファンからも合成されます。

ナイアシンは水溶性ビタミンのため体内に保存することはできず、体にとって必要のない過剰な量は排泄される仕組みに。

ナイアシンが不足すると

ナイアシンが欠乏する症状の一部として、記憶障害、精神障害、倦怠感、うつ病、頭痛、皮膚の障害、口内炎、胃腸障害、下痢などがあります。

重度のナイアシン欠乏症としてペラグラという皮膚病が有名です。皮膚炎、下痢、認知症などの症状が特徴で、食事の種類が偏っていたり、ビタミンB3とトリプトファンが少ないトウモロコシを過食する発展途上国で主に発生していました。

とはいえ多くの欧米諸国や日本の現在の食生活ではナイアシンが不足するリスクは少ないといわれています。

ナイアシンの摂取量

厚生労働省の『日本人の食事摂取基準2015』によると、1日の推奨摂取量は18歳以上の男性で14mg前後(上限約300mg)、18歳以上の女性で11mg前後(上限250mg)だといわれています。

ただ、この数値はペラグラ(ナイアシン欠乏症)の発症を防ぐために最低限必要な摂取量から求められた基準値だということなので、健康効果を期待するなら圧倒的に少ないと考えられます。

ナイアシンの過剰摂取

食品に含まれている程度のナイアシンで過剰摂取になるということはありませんが、高容量のサプリメント等を一度に大量摂取した場合などはいくつかの副作用があらわれることがあります。

一般的な症状としてナイアシンフラッシュという副作用があり、血管が拡張し、顔や皮膚が赤くなったりかゆみがでる場合があります。

これは体内に蓄積されたヒスタミン(かゆみ物質)を体外に排出するためで本来危険なものではなく、一時的な症状で30分から1時間程で収まります。あくまでフラッシュ(皮膚紅潮)であってアナフィラキシーショックとは違います。ナイアシンアミドではこのフラッシュがおきにくいということ。

他の副作用として胃腸や肝機能、眼の健康などへ悪影響の恐れがあるので、過剰摂取には注意。(1)

ナイアシンの健康効果

血流を改善する効果

ナイアシンは血管を拡張する作用があるため、血行を促進して頭痛や肩こりの緩和、血圧低下作用があります。

そしてLDLコレステロール(悪玉)と中性脂肪値を下げ、HDLコレステロール(善玉)を上げるので脂質異常症の改善や動脈硬化、脳梗塞、心血管疾患などの予防改善に役立つとされています。(2,3)

脳の機能を高める

脳神経の変性が原因と考えられている統合失調症をはじめうつ病などの精神障害にはナイアシンが不足しているといわれています。

ナイアシンはセロトニンやドーパミン、GABAなど脳の神経伝達物質の合成に必要な補酵素です。

十分なナイアシンを供給することで精神を安定させるセロトニンが肝臓のトリプトファンから生成されやすくなります。

そしてセロトニンから睡眠ホルモンのメラトニンがつくられるためナイアシンの摂取は寝つきや睡眠の質改善をサポート。

また、ナイアシンはアルツハイマー病の発症リスク低下やパーキンソン病の脳の神経炎症を改善するのに役立つ可能性があるといわれています。(4,5)

パーキンソン病のL-dopa剤は一時的に症状を改善させますがその反面、過剰にドーパミンがドーパクロムに酸化され精神障害や寿命短縮につながる恐れがあり、ナイアシンとコエンザイムQ10がドーパクロムへの酸化を防ぎドーパミンを節約する作用があるとホッファー博士、藤川徳美先生が言及されています。(6)

皮膚の健康を保つ

ナイアシンは皮膚や粘膜の健康を保つ働きがあるためスキンケアや化粧品などに添加されている製品もあります。

ナイアシンは細胞の新陳代謝に必要なNADP(代謝酵素)をつくりだしています。そのため肌の新陳代謝を促進して新しい細胞に生まれ変わらせることで美肌やアンチエイジング効果に期待できます。

アレルギー対策

ナイアシンはアレルギー反応をおこすヒスタミンを細胞から放出させる作用があります。

そのためアレルギー体質の人がナイアシンを摂取すると鼻水やくしゃみ、かゆみなどのアレルギー反応(ナイアシンフラッシュ)が生じやすくなりますが、ヒスタミンを放出し続けることで体内のヒスタミンが減少し、花粉症や喘息症状などの緩和につながります。

ビタミンCにはこのヒスタミンを分解してくれる働きがあるため、ビタミンCをこまめにとりいれ血中のビタミンC濃度を高めておくと辛いアレルギー反応を軽減。

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アルコールの分解を促進

ナイアシンはアルコールの解毒をサポートし、二日酔いを防ぐ働きがあります。

アルコールは肝臓でアルコール脱水素酵素によってアセトアルデヒドに分解されます。そしてアセトアルデヒド脱水素酵素によりアセトアルデヒドは酢酸に分解され、酢酸は二酸化炭素と水に分解して排出されます。

ナイアシンはこの脱水素酵素の補酵素として働くため、二日酔い対策に効果を期待できるのです。

二日酔い対策で有名なヘパリーゼやウコンなどは弱った肝臓を無理に働かせてアセトアルデヒドの分解を促そうとする仕組みに対して、ナイアシンは直接アセトアルデヒドに作用し分解をサポートします。

ナイアシンを多く含む食品

ナイアシンはさまざま食品に含まれていますが、特に肉、魚、ナッツ、豆類に多く含まれています。

  • カツオ
  • マグロ
  • サーモン
  • 牛肉
  • 鶏むね肉
  • 豚レバー
  • ピーナッツ
  • レンズ豆

ナイアシンで健康をサポート

”人類はビタミンCの合成能力を失ってしまったのと同じように、ナイアシンの合成能力も失いつつある”といわれるように、健康やアンチエイジング効果を期待するならナイアシンは食事からの摂取に加え、サプリメント等でも補給していきたいですね。

ただ高容量のナイアシンサプリメントは特定の条件で推奨される場合がありますが、さまざまな副作用が生じる可能性があるため注意が必要に。また持病や服薬中の方は医師に相談した方が良いでしょう。

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【参考文献】

(1) Institute of Medicine (US) Standing Committee on the Scientific Evaluation of Dietary Reference Intakes and its Panel on Folate, Other B Vitamins, and Choline. Dietary Reference Intakes for Thiamin, Riboflavin, Niacin, Vitamin B6, Folate, Vitamin B12, Pantothenic Acid, Biotin, and Choline. Washington (DC): National Academies Press (US); 1998. 6, Niacin. Available from: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK114304/

(2) McKenney J. New Perspectives on the Use of Niacin in the Treatment of Lipid Disorders. Arch Intern Med. 2004;164(7):697–705. doi:10.1001/archinte.164.7.697

(3) Malik S, Kashyap ML. Niacin, lipids, and heart disease. Curr Cardiol Rep. 2003;5(6):470-476. doi:10.1007/s11886-003-0109-x

(4) M Morris et al. Dietary niacin and the risk of incident Alzheimer’s disease and of cognitive decline. J Neurology neurosurgery and psychiatry. 2004, 75(10), 1093-1099

(5) Giri B, Belanger K, Seamon M, et al. Niacin Ameliorates Neuro-Inflammation in Parkinson’s Disease via GPR109A. Int J Mol Sci. 2019;20(18):4559. Published 2019 Sep 14. doi:10.3390/ijms20184559

(6) Abram Hoffer:Healing Children’s Attention & Behavior Disorders: Complementary Nutritional & Psychological Treatments

食生活アドバイザー。スキンケアスペシャリスト。温泉ソムリエ。アラフォー女性健康美容ライター。 ストレスから睡眠障害、喘息発症、帯状疱疹を患う。夫は進行性の神経難病。 食生活やライフスタイルを見直したことで心身の良い変化を実感し、これまでの経験から難病の進行抑制、心と体の健康、エイジング対策探求に情熱を注いでいます。
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