OIL

積極的に摂りたいオイルの代表格「オメガ3脂肪酸」の健康効果

オメガ3脂肪酸は私たちの体内でつくることができないため、食事などから摂取する必要のある必須脂肪酸です。

必須脂肪酸の種類にはオメガ3脂肪酸のほかオメガ6脂肪酸もありますが、オメガ6脂肪酸は加工食品やサラダ油などあらゆるオイルに含まれているため現代の食生活では過剰摂取気味だと言われています。

オメガ6脂肪酸を摂りすぎると細胞膜が固くなり炎症体質になりやすくなったり、オメガ3脂肪酸の吸収が阻害されてしまいます。

オメガ3脂肪酸は主に「DHA」「EPA」「α-リノレン酸」の3つのタイプがあります。DHAとEPAは青魚やオキアミなど魚介類に含まれ、α-リノレン酸は亜麻仁油、えごま油、クルミなどの植物性食品に含まれています。

私たちの体にはおよそ数十兆個の細胞があるといわれており、そのすべての細胞は脂肪酸により組成される細胞膜につつまれています。

オメガ3脂肪酸はこの細胞膜を柔らかくしてくれる脂肪酸です。細胞膜が柔らかくなると膜の流動性が高まり、細胞間での情報伝達がスムーズに行われる為、栄養の吸収や老廃物の排出が促され、脳の活性化、血流改善、美肌、抗アレルギーなどのサポートに役立つのです。

脳の機能を活性化

脳の細胞膜が固くなると情報の伝達がスムーズに行われなくなり、記憶力が低下したり、判断力が鈍ったりしてしまいます。

オメガ3脂肪酸のDHAは脳の細胞膜の主要な構成成分で、記憶や学習に関わる海馬にも多く集まっており、DHAの量が頭の良さや脳を活性化する働きがあります。

牛や豚などの動物性脂肪は常温で固まってしまいますが、魚の脂肪はマイナス40度ほどの低温の海中でも液状を保つことができるため細胞膜を柔らかくしたり、血流改善効果など脳と体の健康にさまざまな効果を生み出してくれるのです。

目の健康を改善

目の網膜の脂質の約40%~60%はオメガ3脂肪酸のDHAで構成されているため、目にも大切な栄養素です。DHAは特定の物質しか通さない血液網膜関門を通り網膜内に入ることができるので、目の構成成分として働くことができます。

十分なDHAの摂取によって視力障害の改善や加齢性黄斑変性症などの予防に役立つ可能性があります。(1)

神経変性障害に対する効果

オメガ3脂肪酸の補給と加齢にともなうアルツハイマー病患者の認知機能低下に対する研究では、発病時や症状が軽度な場合にオメガ3脂肪酸の効果が最も効果的に示されるようです。(2)

また、魚に含まれるパルブアルブミンというたんぱく質がパーキンソン病に有効な可能性があるという研究があります。

パルブアルブミンはシーフードアレルギーの主な原因物質としても知られていますが、パーキンソン病の原因のひとつと考えられるα-シヌクレインという異常なたんぱく質が脳内で形成されるのを防ぐ可能性があるということです。(3)

血流改善、生活習慣病予防

オメガ3脂肪酸のDHAは血管壁の細胞膜を柔らかくしたり、EPAは血小板凝集抑制作用(血液サラサラ効果)があります。

細胞膜が柔軟になることで血流が改善され、動脈硬化や虚血性心疾患の発症を抑制し、コレステロールや中性脂肪、高血圧を低下させ、脂質異常症の予防など生活習慣病を予防改善する働きに効果を期待されています。(4,5)

花粉症やアレルギーの緩和

細胞膜の不飽和脂肪酸の組成バランスによって炎症を起こしやすい体質になってしまうため、日々の食生活ではどんな油を摂取するかが大切です。

オメガ6脂肪酸を摂りすぎると細胞膜が固くなり、炎症を起こしやすいプロスタグランジンが放出します。オメガ3脂肪酸を多く摂ると細胞膜が柔らかくなり、炎症を抑えるプロスタグランジンが出ます。

オメガ6脂肪酸とオメガ3脂肪酸の理想的な摂取バランスは3:1ですが、現代人はオメガ6脂肪酸を摂りすぎて、20:1ほどになっていたり、オメガ3脂肪酸の摂取が圧倒的に少ない傾向に。

花粉症や喘息、アレルギー疾患に悩む人は体が炎症体質に傾いている可能性が高いため、オメガ6脂肪酸を減らして、オメガ3脂肪酸を積極的に摂りいれると良いでしょう。(6)

精神疾患の改善

精神障害を患う人はオメガ3脂肪酸の血中濃度が低いことがよくあると報告されています。

オメガ3脂肪酸を補給することによって細胞膜が柔らかくなると、精神の安定をもたらす神経伝達物質セロトニンなどの伝達能力が高まりやすくなります。

その結果セロトニンレベルも増えるため、情緒の安定をもたらし、うつ症状や攻撃性が減少したり、ストレス緩和にも効果を期待できます。(7,8)

月経痛の軽減

研究ではオメガ3脂肪酸を多く摂取している女性の方が、そうでない女性と比較して月経痛がより軽いということです。

さらにオメガ3脂肪酸は、抗炎症薬のイブプロフェンよりも効果的な可能性があるとも言われています。(9)

美肌効果

肌細胞も細胞膜につつまれていますので、オメガ3脂肪酸は肌の構成成分となります。健康な細胞膜は柔らかく、しっとり、しなやかでシワのない肌細胞を生成。

オメガ3脂肪酸は肌の健康を保ち、老化を遅らせ、紫外線によるダメージから肌を保護する作用にも期待できます。

良質な睡眠をサポート

オメガ3脂肪酸のDHAは睡眠ホルモンのメラトニンにも関与しているため、DHAレベルが高いと睡眠の質と長さを改善する可能性があります。(10,11)

メラトニンは深い良質な睡眠を促す自然なホルモンで、成長ホルモンの分泌を高め細胞の新陳代謝を促進たり、脳の疲労を回復したり、肝細胞の再生、肌の生まれ変わりなども活発にします。

メラトニンは細胞の更新や免疫力を高める最強抗酸化ホルモン

オメガ3脂肪酸の摂取注意点

オメガ3脂肪酸は多価不飽和脂肪酸の中でも非常にデリケートで酸化されやすい油です。油を酸化させる大きな原因は3つあります。

  • 熱を加える
  • 光に弱い
  • 空気にさらす

この3つには注意が必要です。

亜麻仁油であれば、低温圧搾で抽出された遮光性の容器に入ったものを選び、開封後は冷蔵保存で早めに使い切りましょう。

魚の場合は焼き魚より新鮮な生のお刺身の方がオメガ3脂肪酸を効率的に摂取できます。できるだけ汚染されていない海域の魚介類を選びたいですね。

 

【参考文献】

(1) Merle BM, Benlian P, Puche N, Bassols A, Delcourt C, Souied EH; Nutritional AMD Treatment 2 Study Group. Circulating omega-3 Fatty acids and neovascular age-related macular degeneration. Invest Ophthalmol Vis Sci. 2014 Mar 28;55(3):2010-9. doi: 10.1167/iovs.14-13916. PMID: 24557349.

(2) Canhada S, Castro K, Perry IS, Luft VC. Omega-3 fatty acids’ supplementation in Alzheimer’s disease: A systematic review. Nutr Neurosci. 2018 Oct;21(8):529-538. doi: 10.1080/1028415X.2017.1321813. Epub 2017 May 3. PMID: 28466678.

(3) Werner, T., Kumar, R., Horvath, I. et al. Abundant fish protein inhibits α-synuclein amyloid formation. Sci Rep 8, 5465 (2018).

(4) Miyoshi T, Noda Y, Ohno Y, Sugiyama H, Oe H, Nakamura K, Kohno K, Ito H. Omega-3 fatty acids improve postprandial lipemia and associated endothelial dysfunction in healthy individuals – a randomized cross-over trial. Biomed Pharmacother. 2014 Oct;68(8):1071-7. doi: 10.1016/j.biopha.2014.10.008. Epub 2014 Oct 28. PMID: 25458786.

(5) Marchioli R, Barzi F, Bomba E, Chieffo C, Di Gregorio D, Di Mascio R, Franzosi MG, Geraci E, Levantesi G, Maggioni AP, Mantini L, Marfisi RM, Mastrogiuseppe G, Mininni N, Nicolosi GL, Santini M, Schweiger C, Tavazzi L, Tognoni G, Tucci C, Valagussa F; GISSI-Prevenzione Investigators. Early protection against sudden death by n-3 polyunsaturated fatty acids after myocardial infarction: time-course analysis of the results of the Gruppo Italiano per lo Studio della Sopravvivenza nell’Infarto Miocardico (GISSI)-Prevenzione. Circulation. 2002 Apr 23;105(16):1897-903. doi: 10.1161/01.cir.0000014682.14181.f2. PMID: 11997274.

(6) Calder PC. n-3 polyunsaturated fatty acids, inflammation, and inflammatory diseases. Am J Clin Nutr. 2006 Jun;83(6 Suppl):1505S-1519S. doi: 10.1093/ajcn/83.6.1505S. PMID: 16841861.

(7) Hamazaki T, Sawazaki S, Itomura M, Asaoka E, Nagao Y, Nishimura N, Yazawa K, Kuwamori T, Kobayashi M. The effect of docosahexaenoic acid on aggression in young adults. A placebo-controlled double-blind study. J Clin Invest. 1996 Feb 15;97(4):1129-33. doi: 10.1172/JCI118507. PMID: 8613538; PMCID: PMC507162.

(8) Grosso G, Galvano F, Marventano S, et al. Omega-3 fatty acids and depression: scientific evidence and biological mechanisms. Oxid Med Cell Longev. 2014;2014:313570. doi:10.1155/2014/313570

(9) Zafari M, Behmanesh F, Agha Mohammadi A. Comparison of the effect of fish oil and ibuprofen on treatment of severe pain in primary dysmenorrhea. Caspian J Intern Med. 2011;2(3):279-282.

(10) Montgomery P, Burton JR, Sewell RP, Spreckelsen TF, Richardson AJ. Fatty acids and sleep in UK children: subjective and pilot objective sleep results from the DOLAB study–a randomized controlled trial. J Sleep Res. 2014 Aug;23(4):364-88. doi: 10.1111/jsr.12135. Epub 2014 Mar 8. PMID: 24605819; PMCID: PMC4263155.

(11) Peuhkuri K, Sihvola N, Korpela R. Dietary factors and fluctuating levels of melatonin. Food Nutr Res. 2012;56:10.3402/fnr.v56i0.17252. doi:10.3402/fnr.v56i0.17252

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食生活アドバイザー。スキンケアスペシャリスト。温泉ソムリエ。アラフォー女性健康美容ライター。 ストレスから睡眠障害、喘息発症、帯状疱疹を患う。夫は進行性の神経難病。 食生活やライフスタイルを見直したことで心身の良い変化を実感し、これまでの経験から難病の進行抑制、心と体の健康、エイジング対策探求に情熱を注いでいます。
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