慢性的なストレスやイライラ、不安感などの症状は脳の機能を低下し、不眠や自律神経の乱れなど、あらゆる心身の不調につながる可能性があります。不安やストレス解消に役立つ栄養素をとりいれて脳の負担を軽減していきましょう。
心の安定に役立つ栄養素
トリプトファン
トリプトファンは精神安定作用をもたらすセロトニンの原料となります。セロトニンは不安や緊張、うつ症状をやわらげ、鎮痛、催眠、精神安定などの作用のある神経伝達物質で、幸福ホルモンとも呼ばれています。
トリプトファンは必須アミノ酸のひとつで体内では合成されないため、食事や栄養補助食品などから意識的にとりいれたい栄養素。
トリプトファンはレバーや魚、卵、乳製品などのたんぱく質に含まれています。摂取したトリプトファンは脳に運ばれ、ビタミンB6、ナイアシン、マグネシウムとともにセロトニンをつくります。
ビタミンB群
ビタミンB群とは、ビタミンB1、ビタミンB2、ナイアシン、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸、パントテン酸、ビオチンの8種類の総称です。
ビタミンB群はそれぞれ性質や働きが異なりますが、協力して体内で栄養素の代謝を促進させる補酵素として働き、エネルギーを生成したり、老廃物の代謝に働いています。
そのため、たんぱく質が材料となってつくられるセロトニンをはじめ、楽しい、嬉しいと感じるドーパミンなど、すこやかな心を保つために必要な神経伝達物質の生成を促進してくれるのです。
ビタミンB群は精神の安定をサポートするために重要な働きをすることから「心のビタミン」と呼ばれることも。
ビタミンB群は協力しあって作用するためできるだけ多くの成分をバランス良くとりいれると体内で効率良く吸収し効果を発揮しやすいです。ビタミンB群は肉類、魚介類、卵、乳製品、緑黄色野菜などに含まれています。
ビタミンC
ビタミンCは強力な抗酸化作用を持ち、免疫力を高めたり、認知症予防、鉄の吸収促進、骨の健康、コラーゲンの生成にも必要で、健康とアンチエイジングに欠かせないスーパービタミンです。
そしてビタミンCは副腎に高濃度に存在しています。これは副腎においてビタミンCがそれだけ必要だということを示しています。
ストレスを受けると、ストレスと戦うために副腎から抗ストレスホルモンのコルチゾールやアドレナリン、活性酸素などが多く生成されます。
ビタミンCはこれらの抗ストレスホルモンの合成に必要であるとともに、活性酸素の抑制にも使われるため、ストレスを受けるとビタミンCは大量に消費されてしまうことに。
ストレスは不安や緊張といった精神的なものだけでなく、寒さ、暑さ、過労、喫煙、睡眠不足なども体にとってはストレスで、ビタミンCはどんどん消費されてしまいます。
そのため、ストレスに弱い人はビタミンCが不足している可能性もあります。ストレスがかかっていると感じたら、いつもより多くのビタミンCを補給していきたいですね。
ビタミンCは水溶性ビタミンのため失われやすく、体内に溜めておくことができないのでこまめにとりいれることもポイント。ビタミンCはキウイフルーツや柑橘類、ブロッコリー、赤ピーマン、パプリカに多く含まれています。
カルシウム
カルシウムは体内に最も多く存在するミネラルです。リンやマグネシウムとともに健康な骨や歯をつくるほか、神経のいらだちを抑え、精神を安定させる作用があります。
カルシウムは体内に吸収されにくい栄養素のひとつでもあり、加齢とともに吸収率は低下しやすくなります。
カルシウムが不足すると骨粗鬆症や肩こりなどの症状があらわれやすくなるほか、脳の神経細胞が興奮しやすくなって、キレやすい脳、イライラなど神経過敏の状態になることも。
カルシウムと相乗してさまざまな生理機能に関わっているマグネシウムや亜鉛などのミネラルもバランス良くとりいれると、カルシウムは体内に吸収されやくなります。
カルシウムなどのミネラル不足はイライラしてキレやすい脳をつくり、暴力行為や性犯罪などの犯罪者達はミネラル不足だという統計があるそうです。
海藻類はミネラルの宝庫で、多くのミネラルがバランス良く含まれているため、料理に使うだしを昆布などでとると簡単にミネラルを補うことが可能に。
- カルシウムが豊富な食品・・・牛乳、小松菜、ししゃも、ひじき、モロヘイヤ、海藻類など
- マグネシウムが豊富な食品・・・大豆、アーモンド、海藻類、玄米など
- 亜鉛が豊富な食品・・・牡蠣、イワシ、うなぎ、レバーなど
オメガ3脂肪酸
オメガ3脂肪酸はαリノレン酸(亜麻仁油、えごま油など)と、DHA/EPA(魚油)の多価不飽和脂肪酸に分類されます。
体内では合成されない必須脂肪酸で、不足しがちな成分でもあり、食事や栄養補助食品などから意識的にとりいれたい脂質です。
オメガ3脂肪酸のDHAなどは脳や神経組織に多く含まれ、脳の機能を高めることでも知られています。オメガ3脂肪酸は脳の細胞膜をしなやかにする作用があり、炎症を抑制したり、神経細胞間の情報伝達をスムーズにします。
そして神経伝達物質のセロトニンやドーパミンを調節し、不安などの精神障害や脳細胞の機能障害を防ぐ働きがあります。(1)
腸内環境の改善
心の平穏を保つために不安やストレス解消に役立つ栄養素のほか、腸内環境を整えることも重要です。精神安定作用のあるセロトニンは約90%が腸でつくられているからです。
腸内環境が良くなると、神経伝達物質がつくられやすくなり、ストレスに強くなったり、心の安定へとつながります。
【参考文献】
(1) Su KP, Matsuoka Y, Pae CU. Omega-3 Polyunsaturated Fatty Acids in Prevention of Mood and Anxiety Disorders. Clin Psychopharmacol Neurosci. 2015;13(2):129-137. doi:10.9758/cpn.2015.13.2.129